東京都杉並区は介護や子育て、就労などの支援機能を1カ所にまとめた福祉拠点を3月に開く。消費者トラブルの対応窓口や住民の集会所も併設し、将来は区内最大級の特別養護老人ホーム(特養)も設ける。区民の困りごとに担当者が縦割りで対応するのではなく、包括的に支援できるのが特長。いわば福祉の総合窓口で、全国でも珍しい取り組みという。
 荻窪駅近くの公務員宿舎などの跡地に複合拠点「ウェルファーム杉並」を開設する。区は国との財産交換で約6700平方メートルの用地を確保。地上4階建て、延べ床面積約7400平方メートルのビルを建設した。特養部分を除く工費は約33億円を計上した。
 拠点は「縦割りではなく、横串の支援」(田中良区長)をめざす。例えば、介護と育児といった「ダブルケア」に直面した場合、一般的に住民は介護と子育て支援の窓口にそれぞれ足を運ぶ必要がある。窓口や担当職員を1カ所に集めて、いわゆる「たらい回し」を防ぐ。各部署の職員同士が住民の情報を共有でき、効果的な支援が期待できる。
 住民の高齢化でますます対応が求められそうな関連部署も置いた。認知症が進み財産管理が必要になる場合には、成年後見センターが手続きを支援する。高齢者が被害に遭いやすい悪質商法や特殊詐欺の相談には、消費者センターが応じる。
 就労支援では、東京労働局やハローワークと共同で相談窓口「ステップアップしごとコーナーすぎなみ」を4月に新設する。同じフロアには、生活保護の窓口である区の福祉事務所が入る。区は「生活保護の受給者の中には、就労意欲があるが就労機会に恵まれないケースがある」と分析。受給者の生活相談から職業紹介、職場への定着まで一貫して支援する。
 ウェルファーム杉並の敷地の一角には現在、荻窪税務署がある。税務署は約1年後に移転する。移転後の2021年度に、定員200人規模の特養を整備する。診療所や訪問看護の拠点、ショートステイ(短期入所)の施設も開く計画だ。

本記事では、杉並区における複合施設の開設を紹介。
「乳幼児親子から高齢者まで」「多世代が利用できる」「複合施設棟」*1として開設される同施設。同施設では「在宅医療・生活支援センター」「杉並福祉事務所」「杉並区社会福祉協議会」「杉並区成年後見センター」「杉並ボランティアセンター」「就労支援センター」「くらしのサポートステーション」「天沼区民集会所」「消費者センター 」「子ども・子育てプラザ天沼」が同「施設内に集約」*2。これにより「区が制度横断的に地域の相談機関を後方支援」*3することとなる。同一施設内での設置による「「縦割り・横並び」の仕組み」*4への対応状況は、要確認。

*1:杉並区HP(くらしのガイド生活支援ウェルファーム杉並)「ウェルファーム杉並

*2:杉並区HP(くらしのガイド生活支援ウェルファーム杉並ウェルファーム杉並)「◇ウェルファーム杉並(天沼三丁目複合施設)複合施設棟の開設 ~縦割りの支援から、横串の支援へ~

*3:前掲注1・杉並区(◇ウェルファーム杉並(天沼三丁目複合施設)複合施設棟の開設 ~縦割りの支援から、横串の支援へ~)

*4:山崎史郎『人口減少と社会保障』(中央公論新社、2017年)191頁