青森県六戸(ろくのへ)町は全国で唯一実施してきた電子投票の休止を決めた。自治体の費用負担が大きくて普及が進まず、電子投票機の製造・販売企業でつくる「電子投票普及協業組合」(東京都)が機材を新しくすることができなくなったため。町は来春の町議選で実施予定だったが、手書き投票に戻す方針だ。電子投票は早さや正確さを期待されて16年前に導入されたが、実施自治体は事実上なくなった。
 電子投票は2002年施行の特例法で地方選挙に限り解禁された。六戸町は作業が短時間で終わることや、今後普及していくだろうとの期待感もあって03年に電子投票条例を施行し、04年の町長選で初めて導入した。電子投票分の開票は10分で終了し、手書き式の不在者投票分を含めても23分で開票作業は終わった。町選管の担当者は「(書き間違いによる)疑問票は出ないし、作業も早く終わる」と話す。町は16年の町議補選まで計6回実施した。
 だが、投票機のレンタル代が割高で費用対効果が小さいことなどから全国に広がらなかった。総務省によると、これまで電子投票を実施したのは六戸町岡山県新見市など10市町村で計25回にとどまる。京都市は投票機のレンタル代などが1回あたり約3600万円かかり、約3年前に廃止を決定。岐阜県可児市では投票機の異常で選挙自体が無効になるトラブルも起きた。
 投票機の更新時期を迎えたが、電子投票普及協業組合は「採算が合わない」として更新を断念。昨年末、六戸町に「今後の供給は難しい」と連絡した。現在、電子投票ができる条例を制定しているのは六戸町など6市町村あるが、投票機をレンタルしているのは同組合だけのため電子投票は事実上、不可能となる。
 国政選挙で解禁されれば広まるとの期待もあったが、導入を目指す法案は08年に廃案となった。総務省は昨年12月、情報通信技術を活用したインターネット投票などの実現可能性を探る研究会を発足させ、今夏をめどに提言がまとまる見通しだ。六戸町選管の担当者は「せっかく町民に定着してきたのに休止するのは残念。(国に)新たな動きがあれば検討に値する」と話している。【塚本弘毅】
 【ことば】電子投票
 有権者が画面上で候補者名を選ぶタッチパネル式やボタン式がある。コンピューターが投票内容を集計。疑問票が出にくく、開票時間の短縮などのメリットもあることから普及が期待された。2002年6月の岡山県新見市長・市議選で初めて実施された。他に導入したのは青森県六戸町宮城県白石市福島県大玉村▽神奈川県海老名市▽福井県鯖江市▽岐阜県可児市三重県四日市市京都市広島市

本記事では、六戸町における電子投票の取組を紹介。
2011年4月24日付の本備忘録した同町における同取組。2016年「1月17日執行」の同「町長選挙」と同「町議会議員補欠選挙」での「実施」までに、2004年「1月18日」の「町長選挙」、2005年「6月12日」の「町長選挙」、2007年「4月22日」の「町議会議員」、2008年「1月20日」の「町長選挙」、ただし「無投票」、2011年「4月24日」の「町議会議員、2012年「1月22日」の「町長選挙」、ただし「無投票」、2015年「4月26日」の「町議会議員選挙」*1までの8回の選挙で実施。本記事によると、2020年の「町議会議員選挙」では、「手書き投票に戻す方針」の模様。
「多様な意見を集約するための」「手続」*2となる選挙制度。自署式への移行による費用対効果の差異は、公表後、要確認。

*1:六戸町HP(暮らし・防災選挙)「電子投票

*2:砂原庸介「第2章 選挙と代表」柴田直子・松井望編著『地方自治論入門』(ミネルヴァ書房、2012年)36頁

地方自治論入門

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