東京都は二十九日、国の法案より規制が厳しい受動喫煙防止条例案について、四月に発表した骨子案の内容を変えずに、六月議会に提出すると主要会派に伝えた。都は四月以降、関係団体からヒアリングを行い、賛否両論の意見が寄せられたが、従業員を雇っている飲食店は面積にかかわらず原則禁煙とする内容を維持する。 (榊原智康)
 最大会派の都民ファーストの会や第四会派の共産は本紙の取材に対し、厳しい受動喫煙対策の実施に前向きな考えを示している。両会派で過半数を占めるため、条例案は可決される可能性が高い。
 条例案では、従業員を雇っている飲食店は原則禁煙だが、煙を遮る喫煙専用室を設ければ喫煙を認める。従業員を雇っていない個人や家族経営の飲食店は、禁煙か喫煙かを選べる。幼稚園や保育所、小中高校は敷地内禁煙とし、屋外に喫煙所を設けることも認めない。
 罰則は五万円以下の過料。議会関係者によると、条例案の最終案文については都から「調整中」との説明もあったという。
 政府が国会に提出した法案は、面積百平方メートル以下で資本金が五千万円以下の既存店は、喫煙や分煙を表示すれば喫煙が可能。都のヒアリングでは、飲食店やたばこ店の業界団体から「喫煙したい客が離れれば経営に甚大な影響が出て、廃業に追い込まれる店も出る」などと再考を求める意見も出ていた。
 小池百合子知事は二十五日の定例記者会見で、「サイレントマジョリティー(声なき多数派)は、早く(条例制定を)やってよという声の方が多いと思う」と述べていた。

本記事では、東京都における受動喫煙防止規制の取組を紹介。
2017年9月11日付同年11月28日付同年12月8日付2018年1月31日付同年2月22日付同年4月23日付同年4月25日付同年5月16日付の各本備忘録で記録した、同都による受動喫煙防止の条例制定の検討。同年5月25日に開催された同都知事記者会見では、健康増進法の改正に関しては「今国会どこまでいくのかなと、こちらもそのあたりを心配しながら見ている」との姿勢をとりつつ、同条例案に関しては「地方自治としての判断として」「二定を目標として仕上げてまいりたい」、そして「そのために、各党、各会派の方にもご説明を続けている」*1同都。本記事によると、同年5月29日に同都議会の「主要会派」に対して「骨子案の内容を変えずに、6月議会に提出する」ことが伝えられた模様。上記の記者会見では、国の法改正よりも「こちらが条例を先に作ったときの後の処置」には「それは必要になってくるかと思」うとの判断が示され、「いずれにせよ、有効な措置、有効な受動喫煙対策が図られるということが必要」との認識から、「それはそのときにまた、心構えも含めて、考えていきたいと思って」*2との方針も示されている。「国法」には配慮しつつ「条例主義」*3に基づく同条例案の作成。今後の審議状況は、要経過観察。

*1:東京都HP(都政情報知事について知事の部屋知事の記者会見知事記者会見/平成30小池知事「知事の部屋」 / 記者会見(平成30年5月))「小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成30年5月25日)

*2:前掲注1・東京都(小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成30年5月25日))

*3:松井望「課題設定と自治政策法務」北村喜宣・山口道昭・礒崎初仁・出石稔・田中孝男編『自治政策法務の理論と課題別実践 鈴木庸夫先生古稀記念』(第一法規、2017年)、288頁

自治体政策法務の理論と課題別実践-鈴木庸夫先生古稀記念

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