受動喫煙対策を強化する改正健康増進法は18日、参院本会議で可決、成立した。事務所や飲食店など多くの人が使う施設は原則として屋内禁煙、学校や病院、行政機関は敷地内禁煙とするなど受動喫煙対策は一歩前進する。ただ小規模の飲食店には例外を認めるなど抜け穴も多く、6月に成立した東京都の受動喫煙防止条例と比べても甘さが目立つ。
 同法は東京五輪パラリンピックの直前の2020年4月に全面施行する。事務所は煙が室外に流出しない専用の喫煙室を設ければ、喫煙を認める。個人や中小企業が経営する既存の飲食店で客席面積が100平方メートル以下の店は「喫煙可能」などの標識を掲げれば、店内でたばこを吸うことができる。
 こうした例外規定のため、厚生労働省によると全国の飲食店のうち同法による規制の対象となるのは約45%にとどまる。飲食店は5年のうちに3割強が入れ替わるため段階的に対象は拡大するが、例外を広く認めたことは否めない。
 同法では小中学校や保育所は敷地内を禁煙とするが、屋外のスペースに喫煙場所を置くことができる。
 都の条例は国より厳しい規制を設けた。例えば飲食店だ。面積による線引きはなくして、従業員を1人でも雇っている店を一律で規制し、店内では原則たばこを吸えなくなる。たばこを吸えるのは煙が外に流れ出ないように設計した喫煙専用室だけだ。都は喫煙専用室の設置費の9割(上限300万円)を補助する。
 都によると同条例によって都内の飲食店の84%が規制される。国の規制対象を大きく上回る。
 小中学校や保育所を巡っても、都は完全な禁煙にこだわった。敷地内を禁煙にするとともに、屋外への喫煙場所の設置も禁止することで、子どもがたばこの煙を吸う機会を減らした。
 国も当初、飲食店に対し例外なしの禁煙を目指していたものの、たばこ産業や飲食業への影響に配慮する自民党内から反対論が出て、例外措置を広く認めることになった背景がある。
 国よりも厳しい規制を導入しようという動きは都にとどまらない。千葉市大阪府も国の基準を上回る条例策定へ検討を始めた。千葉市熊谷俊人市長は12日の記者会見で「東京五輪というきっかけを有効に活用し、市民の健康増進に配慮した独自の規制を考える必要がある」と述べた。
 大阪府松井一郎知事も4日の記者会見で、19年2月府議会に受動喫煙防止条例案を提出する方針を表明した。店内での喫煙を認めるのは「客席面積30平方メートル以下」にする考えだ。
 受動喫煙対策を自主的に強化する飲食店を支援する自治体も出ている。
 国の受動喫煙対策は海外と比べても遅れが目立っている。世界保健機関(WHO)の4段階の基準では、日本の受動喫煙対策は最低レベルだ。今回の改正健康増進法が施行されても1ランクしか上がらない。病院や学校、飲食店、バーなど人の集まる場所8施設すべてを禁煙とする英国やカナダなどには及ばないのが実情だ。今回の法改正を足がかりにして、さらなる見直しの議論が求められそうだ。

本記事では、国会における健康増進法改正案の審議結果について紹介。
2018年6月11日付の本備忘録で記録した同法改正案の衆議院での受理。その後、衆議院では、同年同月15日に「厚生労働委員会」、「本会議」は同年同月19日にそれぞれ「可決」され同日参議院が「受領」、参議院では同年7月12日に「厚生労働委員会」そして、本記事で紹介されている通り、同年同月18日に「可決」*1されている。「喫煙場所を包括的に制限する法律」*2の成立後の同法に基づく実施状況は、要観察。

*1:参議院HP(第196回国会(常会)(平成30年1月22日〜 )議案情報)「健康増進法の一部を改正する法律案

*2:田中謙『タバコ規制をめぐる法と政策』(日本評論社、2014年)302頁

タバコ規制をめぐる法と政策

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