金沢市は1968(昭和43)年に全国初となる景観条例「伝統環境保存条例」を制定して今年で50年を迎えたのに合わせ、「金沢 景観五十年のあゆみ」を発刊した。本編と資料編の2冊で、市はこれまでの取り組みを振り返りながら、景観保全への取り組みをさらに進めることにしている。(本安幸則)
 景観保全を目的とした独自の条例を市が制定したのは、六六年制定の「古都保存法」の対象都市にならなかったのがきっかけ。高度経済成長期が続く中、全国で歴史的建造物や景観の破壊が問題となり、戦災を免れた金沢でも歴史的景観が失われていくことが危ぶまれていた。
 条例では「伝統環境保存区域」を指定。区域内の建築行為について事前の届け出を義務付け、助言や指導、勧告を通じ景観保全を図る内容。その後、同条例が発展継承する形で、歴史的景観だけでなく都市景観を含めた「都市景観条例」(八九年制定)、国の景観法を活用した現在の「景観条例」(二〇〇九年)に推移。その間、一七年度までに金沢の町並みに個性を生んでいる個別の景観資産を守るため、「用水保全条例」「夜間景観形成条例」「川筋景観保全条例」など七つの関係条例も設けている。
 本編は八章からなり、こうした各条例制定の背景、内容を紹介。終章では「提言」として、市の景観行政に関わってきた有識者六人が意見を寄せている。資料編では、各条例の条文や区域図、過去の審議会の審議内容なども盛り込んだ。
 本編八百部、資料編二百部を作り、市内図書館や公民館、小中学校、大学などに配布。一般への配布はしないが、本編を市ホームページに掲載しており、概要版も作成して市民に広く知ってもらうことにしている。<
本記事では、金沢市における景観保存の取組を紹介。
同市では、2018年8月7日に『金沢景観五十年のあゆみ』*1を発刊。同誌では、同市が1968年に「金沢市伝統環境保存条例」を制定し「50年」となることを「記念」し「この間の取り組み」を「資料と関係者の証言に基づき概要をまとめたもの」*2ている。
「構成」は「序章を含め全10章」*3。同市では「景観に対する50年間の施策展開」を、「1965〜1989」年を「景観始動期」、続いて「1989 〜2008」年が「景観成長期」、「2009」年以降は「景観発展期」と「おおむね3 期」*4に区分し、第1章から第3章で記述する。第4章から第6章では「景観に対する独自な取り組み」、第7章と第8章では「地域・人と景観の関わり」*5を記録している。同記録の取りまとめによる、他自治体における条例制定後の実施状況の記録の普及への「フィードバック」*6状況は、要観察。

*1:金沢市HP(住まい・交通・まちづくり金沢の景観)「金沢景観五十年のあゆみ

*2:前掲注1・金沢市(金沢景観五十年のあゆみ)1頁

*3:前掲注1・金沢市(金沢景観五十年のあゆみ)1頁

*4:前掲注1・金沢市(金沢景観五十年のあゆみ)1頁

*5:前掲注1・金沢市(金沢景観五十年のあゆみ)1頁

*6:伊藤修一郎『自治体発の政策革新』(木鐸社、2006年)39頁

自治体発の政策革新―景観条例から景観法へ

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