二〇二〇年東京五輪パラリンピックに向け、東京都は十九日、床面積が千平方メートル以上の宿泊施設を新設か増改築する場合、すべての客室にバリアフリー化を義務付ける方針を発表した。関連条例の改正案を来年二月議会に提出し、同年九月の施行を目指す。成立すれば全国で初めて。
 現行のバリアフリー法と都条例では、室内に段差がなく車いすで利用できる広い浴室などを備えたバリアフリー客室は、一定の割合で設置すればよい。東京大会中、車いすを使う観客らの宿泊に最大で一日八百五十室が必要とみられるが、現状では五百五十室しか提供できない状況という。
 このため都は、すべての客室で出入り口ドアの幅を八十センチ以上とし、室内に段差を設けないなど、車いす使用者らの宿泊に最低限必要な基準を条例で定める。意見公募を十九日〜来月十九日に実施。既存の宿泊施設には来年度から、補助金を拡充して改修を促す。
 DPI(障害者インターナショナル)日本会議バリアフリー担当顧問、今西正義さんは「料金の高いバリアフリー室でなく、一般客室を利用したい人は多い」と都の姿勢を評価した。 (石原真樹)

本記事では,東京都における建築物のバリアフリー化の取組方針を紹介。
同都では,従前より「床面積 1,000 m²以上の宿泊施設を対象に」「車いす使用者用客室の整備等」を進めてきたなか,「一般客室」においても「段差の解消や出入口の幅等に最低限の基準」の「規定整備」*1の方針案が提示。同案では,「旅館業法第2条第2項に規定」される「旅館・ホテル営業の用に供する施設」のうち「床面積の合計が 1,000 m²以上の新築,増築,改築又は用途変更」*2が対象となる。具体的には,「各客室までの経路」では「道等及び車椅子使用者用駐車施設から各客室までの経路のうち1以上の 経路上に階段又は段を設けない」こと,「客室内の基準」では「客室の出入口の幅は 80cm 以上 」とし,「客室内の便所及び浴室等の出入口の幅は 70cm 以上 」とすること,そして「客室内に階段又は段を設けないこと」,さらに「客室出入口から1のベッド、便所及び浴室等までの経路の幅は 70cm 以上」*3とする案が示されている。一般客室のバリアフリー化を促進する「はじめの一歩」*4ともなる同規定案。今後の審議状況は,要観察。

*1:東京都HP(都政情報報道発表これまでの報道発表 報道発表/平成30(2018)年 10月「高齢者等が利用しやすい建築物の整備条例」御意見募集」(2018年10月19日  都市整備局))「(別添)建築物バリアフリー条例における宿泊施設の規定整備の考え方(案)

*2:前掲注1・東京都((別添)建築物バリアフリー条例における宿泊施設の規定整備の考え方(案))

*3:前掲注1・東京都((別添)建築物バリアフリー条例における宿泊施設の規定整備の考え方(案))

*4:伊藤修一郎『自治体発の政策革新』(木鐸社,2006年)259頁

自治体発の政策革新―景観条例から景観法へ

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