長野県は市町村単独では提供が困難になっている行政サービスへの支援を強化する。消費生活センターの設置で広域化を後押しするほか、橋梁点検の技術者や森林管理の専門人材の養成でも体制づくりに乗り出した。県内は小規模自治体が多く、人材確保が課題。人口減が急速に進むなか、県の主導で新たな行政のあり方を探る。
 県は「県・市町村事務連携作業チーム」が中心になり、市町村への消費生活センター設置と橋梁点検の人材養成について対応策を検討してきた。
 消費者の相談窓口となる消費生活センターは、市町村も努力義務で設置が求められているが、県内町村の単独での設置は1町にとどまる。そこで県はセンターを複数の市町村で設置する場合の調整や消費生活相談員の研修事業で支援する。
 県が独自に人材や財政面で支援する5市町村の広域連携組織「北アルプス連携自立圏」では、すでに大町市を中心に町村が参加した消費生活センターが運営されており、こうした例を参考に設置を支援していく。
 橋梁点検の専門家育成では県が音頭をとって産官学による「信州橋梁メンテナンス支援協議会」を9月に立ち上げた。同協議会を通じ、県独自の「橋梁MAE」と呼ぶ技術者の養成講座を開設するほか、資格認定制度もつくる計画だ。
 高度成長期に建設された橋梁などのインフラ老朽化に対応し、国は2013年の道路法改正で道路管理者に橋梁などの点検を義務付けた。小規模な自治体では専門家が不足しており、県内市町村の人材確保の負担軽減につなげる。
 今後懸念されるのが森林管理業務に携わる専門職員の不足だ。19年4月に施行される森林経営管理法では、適切に管理されていない森林は市町村が仲介役となって意欲ある経営の担い手を探し、経営に適さない場合は市町村自らが管理する。
 県によると、市町村の約7割で林務に携わる職員が他の業務も兼務しているのが実態。県は森林管理の関連業務を支援する部署を設け。広域連携による体制づくりを市町村に促す。19年度に準備協議会を立ち上げ、20年度には市町村連携での対応を進めたい考えだ。
 県内市町村の職員数は、ここ数年は保育人材の確保もあって微増だが、減少傾向が続く。現状でも職員数が数十人規模という村が少なくない。人口減による財政難から市町村単独での行政サービスの維持は難しさを増すとみられ、自治体の垣根を越えた連携が急務だ。

本記事では,長野県における市町村連携の取組方針を紹介。
同県では,2018年11月8日に開催された「第16回」の「県と市町村の協議の場」において「県・市町村事務連携作業チーム」の「検討結果」*1が報告。同検討では「道路,橋梁の維持管理,法定点検」では,同県による「技術者の養成」と「相談受付」,「現場技術業務委託の導入」,「消費生活センターの共同設置」では「広域設置に向けた協議の実施」と「消費生活相談員の確保・育成」*2が提示されている。「都道府県は頼りになる」*3具体的な業務の実施状況は,要観察。

*1:長野県HP(県政情報・統計市町村・地域市町村県と市町村との協議の場第16回「県と市町村との協議の場」)「資料4「県・市町村事務連携作業チーム」検討結果

*2:前掲注1・長野県(資料4「県・市町村事務連携作業チーム」検討結果)1頁

*3:田村秀『地方都市の持続可能性 「東京ひとり勝ち」を超えて 』(筑摩書房,2018年)85頁

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