藤沢市鵠沼海岸で、海岸の利用ルールをめぐり、地元サーファー団体間で論争が起きている。漁協に「謝礼」を払うなど独自のルール制定を目指す団体が設立され、同海岸を使用すると県に届け出たことが発端。新団体は漁協の支持を得ていることなどを理由に、他団体が海岸を使う場合は連絡するように主張。これに対して既存の団体が「浜の私物化につながる」と反発している。
 今年4月から11月にかけての土、日、祝日、鵠沼海岸を漁業振興のために使うとする「海岸一時使用届」を県に出したのは、5月28日にNPO法人の認証を県から受けた「鵠沼の海を守る会」。同市内のサーフショップ店主らを役員とし、趣旨に賛同する人にステッカーを販売するなどして資金を集め、漁業者に謝礼を払うとしている。使用届は、浜辺の使用状況を把握するため県が受け付けている。守る会によると、先に届け出た団体に後から出した団体が連絡して調整する慣例があるといい、同会が連絡や調整の窓口になると主張している。同会の古屋総史理事長は「漁業権のある漁協に使用料を払うのは当然」とし、4月にサーファーら約50人に趣旨を説明し、賛同を求めた。
 一方、全国組織の日本サーフィン連盟の湘南藤沢支部を実質的に兼ねる同市サーフィン協会(会員約400人)の田中啓三相談役は、「届け出だけで使用の実態がない。新団体が海岸を取り仕切り、使用料を集めようという意図としか思えない」と首をかしげる。同協会によると、これまでは同協会が調整の上で、サーフィンの大会を開く団体が使用届を出していた。田中相談役は「地引き網の区域を避けるなどすれば漁業と共存できる。一方的な使用料徴収を認めれば、国民が自由に海岸を使える権利を侵すことになる」と話す。
 相模湾沿岸では県の主導で自治体ごとに「海・浜ルール」と呼ばれる自主的な決まりが設けられている。藤沢市では、地引き網操業中の赤い旗が立ったときにはサーフィン愛好者は船や網に近付かないようにするなどのルールを設けているが、漁協に謝礼を支払うかどうかは決まっていない。
 漁業者の反応も様々だ。藤沢市漁協の葉山一郎組合長は「現行の海・浜ルールは守られていない。地引き網操業中にサーファーが漁師にぶつかったり、操業エリアに入ってきて迷惑を受けている」とし、「守る会」の活動に協力するよう日本サーフィン連盟湘南藤沢支部あてに要請文を出している。江の島・片瀬漁協の浜野正一郎組合長は「聞いていない」と静観の構え。藤沢市の年間海水浴客は約400万人で全国有数。鵠沼海岸は早くから米軍人の指導で近代サーフィンをした記録があり、1966年に初の全日本大会が開かれた千葉県の鴨川海岸などとともに「日本サーフィン発祥の地」とされており、論争の行方が他の海岸に影響を及ぼす可能性もある。

本記事では,藤沢市における海岸利用ルールについて紹介.
本記事にも紹介されている「海・浜ルール」に関しては,同市が位置する神奈川県のHPを参照*1.同ルールは,「相模湾」が「大変多くの沿岸漁業」が営まれている一方で,「海洋性レクリエーションを楽しみに本県の海」へ「多くの人々」が「やって来」られることもあり,結果的に「沿岸漁業とのトラブルが多発するようにな」ったことを踏まえて,「相模湾側の三浦市から平塚市にかけて地域ごとにルールブックを作成し,漁業者とのトラブル解消に努め」*2る取組.自治体の「更に地域ごと」の「コミュニティ・ルール」*3の一種としても整理ができそう.本記事にて紹介されている,藤沢市における「海・浜ルール」に関しては,同市HPを参照*4
同ルールでは,「辻堂から江の島にかけての「海」と「浜」の利用に関して定め」られており,「お互いにルールとマナーを守りましょう」 「自然を大切にしましょう」 「みんなで仲良く安全に」 の「三つをスローガン」とされ,「藤沢の海では、サーフィン愛好者人口が非常に多いこと」を踏まえて,「地曳網とサーフィン愛好者との良好な関係を図るため」にも「砂浜に地曳網操業中の赤い旗が立った時は船や網に近づかないように注意しましょう」という,「ルールを設けたこと」*5が特徴とされている.本記事では,同ルールへの認識が,利用者と事業者間で差異があるなかで,「独自のルール制定を目指す」動向もあることを紹介.
「コミュニティ・ルール」の基盤となるとも考えられる「「住民の合意」や「地元の合意」」の「実質化」*6を図るうえでの「価値生産と価値配分の間の緊張関係」*7がどのように整序されているか,要経過観察.

*1:神奈川県HP(組織と仕事案内環境農政局:水・緑部:水産課)「海・浜ルールを守りましょう

*2:前掲注1・神奈川県(海・浜ルールを守りましょう)

*3:財団法人日本都市センター『分権型社会における自治体法務』(財団法人日本都市センター,2001年)56頁

*4:藤沢市HP(市民の方へ学ぶ・楽しむ水産業ふじさわの水産業のいま・これから)「藤沢 海・浜のルール

*5:前掲注4・藤沢市(藤沢 海・浜のルール)

*6:阿部昌樹「地域社会における合意形成と自治逮捕政策法務」『Jurist』No.1335,2009.9.15,112頁

Jurist(ジュリスト)1385

Jurist(ジュリスト)1385

*7:松浦正浩『実践!交渉学』(ちくま新書,2010年)175頁

実践!交渉学 いかに合意形成を図るか (ちくま新書)

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