岡山市は13日、2012年度予算編成の方針をまとめた。財政指標が改善したのを受け、各局室の予算に上限を設ける要求基準(シーリング)を11年度当初比マイナス3%に緩和した。
 行革効果や国の地方財政対策で市財政は好転。12年度の財源不足は約20億円(11年度は約50億円)と圧縮する見込みとなり、06年度から6年間続けた実質マイナス5%のシーリングを2ポイント下げた。シーリングの対象外として予算を重点配分する特別枠は継続。14年に同市と名古屋市で開かれる「国連ESD(持続可能な開発のための教育)の10年」最終年会合に向けた事業などで予算要求を認める。重要施策として、太陽光発電の推進と、東日本大震災を踏まえた市有施設の耐震化を新たに挙げ、11年度に引き続き景気浮揚の経済対策事業などをシーリング対象外とした。
 2億円超に上る不当経理が明らかになったことを踏まえ、予算の使い切り意識の解消を図るため、節減分だけ翌年度予算要求を増やせる仕組みを導入する。各局室は11月8日までに財政課に予算要求。市長査定などを経て来年2月に当初予算案をまとめる。

本記事では,岡山市における平成24年度当初予算編成方針に関して紹介.
平成24年度当初予算編成方針」では,本記事後段でも報道されているように,「不適正な経理処理が明らかになったことを踏まえ」「予算使い切り意識の解消を図る観点から」「各課の節減努力により生じた予算不用額」を「次年度の予算編成において評価する仕組みを導入することとしている」*1.いわば,「スペンダー」である各局室へ「裁量」*2を与え,「自己管理のインセンティブ*3の仕組みの導入.
同取組は,横浜市にて2003年度から「予算におけるメリットシステム」*4として導入され,「予算執行段階での創意・工夫による歳出削減や財源確保の取組を評価」されている.具体的には「各区局の取組の中から取組事業のなかから」,「区局の経理担当課長などで構成」される「評価委員会」が「 創意工夫の度合いを評価」する「ひらめき度」,「行動力・実行力を評価」する「がんばり度」,「コスト削減と市民満足度の両立を評価」する「まんぞく度」,「庁内への波及効果を評価」する「ひろがり度」,「翌年度以降の予算削減・財源確保への反映を評価」する「つながり度」のそれぞれ「5点満点」で5つの評価軸による「25点満点」で「優秀事業を選定」*5.その結果「優秀事業」と位置付けられると「歳出削減額及び財源確保額の1.5倍または2倍の額」,「標準事業」では「0.75倍または1.5倍の額」をそれぞれ「翌年度より一括または2か年間」「取組を行った組織に対して,予算編成時の財源の一部として配分」*6される.
効果としての毎年度の節減額は拝見させて頂くと,下記表の通り.2003年度から2011年度までに,825件がその対象となり,総額49億1,255万円を節減されていると整理.ただ,導入当初に比べると,その取組件数は減少傾向にある様子も窺えそう.ただ,これは同市の各部門での節減化が一応の達成が図られつつある,又は,同取組の回避し始めたというよりも,同取組では,「過去の事例の中で,申請が多く様々な職場で取り組まれている事例」,例えば「パンフレット等の印刷製本費の削減」「IP電話の設置」「光熱水費の削減」「内部講師の活用による報償費・委託費の削減」「HPのバナー広告による財源確保」,に関しては「すべての職場で必ず取り組む「標準化事例」」と位置付け「メリットシステムの対象から除外」されていることも反映されているとも解せそう.

取 組 件 数 節 減 額
2003年度 136件 8億8,900万円
2004年度 220件 13億8,900万円
2005年度 167件 13億300万円
2006年度 94件 3億5,800万円
2007年度 83件 5億1,700万円
2008年度 53件 2億400万円
2009年度 49件 1億2,100万円
2010年度 23件 1億3,155万円
合計 825件 49億1,255万円

同市の「次年度の予算編成において評価する仕組み」の具体的内容,そして,その運用状況も,要経過観観察.

*1:岡山市HP(市政情報:市政のあらまし財政予算平成24年度予算)「平成24年度当初予算編成方針」4頁

*2:田中秀明『財政規律と予算制度改革』(日本評論社,2011年)331頁

財政規律と予算制度改革  なぜ日本は財政再建に失敗しているか

財政規律と予算制度改革  なぜ日本は財政再建に失敗しているか

*3:北村喜宣『環境法』(弘文堂,2011年)177頁

環境法

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*4:横浜市HP(記者発表資料過去の一覧記者発表資料 (2011年10月))「「予算におけるメリットシステム」平成22年度執行分の実施結果について」(平成23年10月3日,財政局財政課)

*5:前傾注4・横浜市(「予算におけるメリットシステム」平成22年度執行分の実施結果について)2頁

*6:前傾注4・横浜市(「予算におけるメリットシステム」平成22年度執行分の実施結果について)3頁