広島県湯崎英彦知事と広島市松井一実市長は、非効率な二重行政の解消に向けて協議を始めることで合意した。都道府県と政令指定都市の関係をめぐっては、大阪府大阪市のダブル首長選で争点となるなど各地で議論が起こっている。両トップは対話を軸に役割分担の明確化を目指す考えを示す。住民の視点に立った策が示せるかが焦点となる。
 4月に松井市長が就任して2度目のトップ会談。二重行政の解消を目指す研究会の設置は松井市長の提案だった。終了後、湯崎知事は「(トップ同士の)信頼関係をベースに二重行政解消に最適な答えを導きたい」と賛同したことを強調した。松井市長は研究会の役割を「重複事業の仕分け」と位置付ける。重複事業を洗い出して(1)県主体(2)市主体(3)県市が連携―の3種類に分け、効率的な行政運営を検討する。具体的には観光振興を担う団体や研究開発部門の統合などが想定される。都道府県と、それに近い大きな権限を持つ政令市との関係は不協和音が目立つ。広島県広島市も廃止が決まった県営広島西飛行場(西区)の存廃などをめぐり対立が続いていた。広島県広島市はまず効率的な行政サービスの在り方を探り、現実路線を重視する構えだ。住民が実感できる具体的な成果を広島県広島市が示せれば、全国での見直し論議にも影響を与えそうだ。

本記事では,広島市広島県において,両首長による会談が開催されてことを紹介.同会合の第2回目.
2011年11月18日付の読売新聞を拝読させて頂くと,両首長以外にも「県,市の幹部職員8人を交え」つつ「非公開」*1で開催.ただ,本記事,同記事,そして,2011年11月15日付の同県知事記者会見時の配付資料からは,「県庁北館2階 第1会議室」で「午前10時」から「午前10時45分」迄の予定で開催されて,「平和貢献に向けた取組」,「県・市が一体となった就労支援対策の展開」,「県・市連携のあり方研究会」,「市内中心部の活性化」等に関して「意見交換」*2が行われた模様.本記事では,「二重行政を解消」に向けた研究会を設置し,これにより「重複事業を洗い出して(1)県主体(2)市主体(3)県市が連携―の3種類」に「分け」て「効率的な行政運営を検討」る方針であることを報道.
2011年7月29日付及び同年11月2日付の両本備忘録で記録した,横浜市川崎市相模原市と神奈川県に位置する政令指定都市及びさいたま市千葉市京都市,神戸市により設置された「大都市制度に関する研究会」,2011年8月3日付の本備忘録にて記録した静岡市浜松市により設置された「特別自治市研究会」の両研究会では「特別自治市*3の制度設計を主たる議題とされているようではあるものの,広島市広島県により設置される研究会(「県・市連携のあり方研究会(仮称)」)では,「二重行政の解消」に議題を限定されたことが特徴的.
では,これまでの両首長の「二重行政」の認識を記者会見での応答を通じて確認してみると,まず,同県知事は,上記記者会見内で,「知事職」の就任後に同「市との関係でこれは二重行政困った」「具体的なこと」に関する記者から質問に対して,「困ったなというか,当然にいろんな施設的なオーバーラップであるとか,ある程度ですよ,存在するわけですよね。でも役割分担を結構している」と,現状としては,「ある程度の」重複の存在と「結構」」*4な役割分担関係にあるとの認識が示されている.方や,同市長は,2011年8月24日付の記者会見のなかで,「大阪市長選挙」に関する質問への応答のなかで,「二重行政ということが当たっているかどうか分かりませんけど県行政との調整の局面が大きくなっている」*5と,明確な支障事案としてというよりも,いわば調整問題であることの認識が示されている.
「良い二重行政」と「悪い二重行政」*6があるとの整理も示される議論も提示される一方で,「機能的なすみ分け」と「整理統合」*7の必要も主張され,まさに「改革を推進するための命題」となりつつある,「ドクトリン」*8としての「二重行政」.その「問題解決へのアプローチ」は「何らかの大都市制度改革」が「決着をつける決定的な手段」となる以前に,「広域自治体と基礎的自治体という区分」と「現状の住民との近接性に基づく行政サービスの区分との対応関係をリセットする必要」*9との方向性も考えられる.また,現行制度を前提に双方の利得を考慮しつつ「「二重行政」という調整問題」の解消を図ろうとすれば,大別すれば「一元化路線」「二元化路線」「双方撤退路線」のいずれかの制度選択を迫られる.そして,具体的には「クロスセクショナル」に,その「調整問題を一つひとつ解いていくこと」ため,一つひとつの解決は存外「複雑でデリケート」*10な議論と調整と決定が求められそう.実際の検討とその結果は,要経過観察.

*1:読売新聞(2011年11月18日付)「「二重行政」解消へ研究会 知事と広島市長

*2:広島県HP(県政情報・統計ようこそ知事室へ記者会見知事記者会見(平成23年11月15日))「広島県知事・広島市長会談の開催について

*3:指定都市市長会HP(地域主権改革の必要性指定都市制度の課題新たな大都市制度「特別自治市」の創設に向けて)「新たな大都市制度の創設に関する指定都市の提案 〜 あるべき大都市制度の選択「特別自治市」〜詳細版」(指定都市市長会平成23年7月27日)

*4:広島県HP(県政情報・統計ようこそ知事室へ記者会見)「知事記者会見(平成23年11月15日)

*5:広島市HP(ようこそ市長室へ記者会見)2011年08月24日記者会見「初めての平和記念式典について外2件

*6:澤井勝・村上弘・大阪市政調査会編著『大阪都構想Q&Aと資料』(公人社,2011年)54頁

大阪都構想Q&Aと資料―大阪・堺が無力な「分断都市」になる (自治総研ブックス)

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*7:橋下徹堺屋太一『体制維新』(文藝春秋,2011年)185,190頁

体制維新――大阪都 (文春新書)

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*8:牧原出「「二元代表制」と「直接公選首長」」『地方自治』第768号,2011年11月,10頁

地方自治 2011年1月号

地方自治 2011年1月号

*9:大杉覚「大都市制度をめぐる制度論議の課題と展望」『地方自治』第761号,2011年4月号,17,19頁

地方自治 2011年 04月号 [雑誌]

地方自治 2011年 04月号 [雑誌]

*10:松井望「大都市制度をめぐる諸問題‐「二重行政」という問題とその解‐」『都市とガバナンス』vol.16,2011年9月,40〜41頁

都市とガバナンス 第16号

都市とガバナンス 第16号