市の職員が手分けして、一人暮らしのお年寄り全員の自宅を訪問します−。太田市は今月から、職員が自ら高齢者の安否を確認する「おとしより見守り隊」事業を始めた。民間の宅配業者などに見守りや通報の協力を求めるケースは多いが、市の「直営」は全国初の試みという。 (美細津仁志)
 「おばあちゃん、お元気そうで」「いえいえ、もう八十六歳だもの」
 玄関に出てきた女性に、市企画政策課の福田京子課長補佐がゆっくり話し掛ける。後ろでは、別の職員がやりとりから健康状態や生活環境を確認。チェックシートに丸印を書き込んでいた。専用の紺色ジャンパーに首から身分証を下げた福田課長補佐らは、本来の業務の合間に、民生委員の案内で女性宅を訪ねた。この日は一軒あたり五〜十分かけ、計八人の自宅や勤務先を約三時間かけて歩いた。
 見守り隊は全国で孤独死が相次いだのを受け、「行政が市民の暮らしを守る仕事を人任せにしてはいけない」と市を挙げてスタート。十月、消防部門を除く七十五課の係長代理級以上計約四百人で結成した。今月中には一人暮らしの高齢者全員に当たる約四千三百人を訪問し、顔を覚えてもらうという。太田市では既に、民生委員と市社会福祉協議会の「ふれあい相談員」が月一〜二回、高齢者宅を定期訪問している。さらに、職員も訪問する利点として市は、個人情報を守れる人員を一度に確保できると説明。寝たきりなど、特に継続して見守る必要がある人は約四百人いるが、十二月からは週一回は誰かが巡回できる計算になるという。
 反応は好意的だ。ある女性(71)は「心配してわざわざ足を運んでくれ、ありがたい」と感謝する。話し相手がいないお年寄りの中には、身の上話が止まらなくなる人もいる。訪問時に「ごみが出せない」「市街地の空洞化が進み、買い物する場所がない」「家の周囲に空き家が多い」などと聞いた福田課長補佐も「お年寄りとのやりとりから、まちの課題を肌身で感じられる」と語る。担当の市元気おとしより課には、他の自治体から問い合わせが寄せられている。だが、本来業務への影響は未知数。十二月に業務への影響を庁内で取りまとめる予定だ。

本記事では,太田市における高齢者への見守り事業の取組を紹介.同事業に関しては,同市HPを参照*1
同取組では,同市の「65歳以上のひとり暮らし高齢者」「約4,500人」を対象に,「これまでの見守り体制に加え,市職員の直接訪問による見守り」を実施.2012年11月1日から「訪問を開始」されており,「1回目は,全対象者を訪問し地域の状況」の把握と「行政情報ラジオを配付」.「2回目以降からは,特に重点的な見守りが必要な,約1割(450名程度)の対象者を月2回訪問」される.訪問の期間は,「これまでの見守り体制」を担う「民生委員・ボランティア・ふれあい相談員との棲み分けと連携」を図る目的から,「各月の第1週」を「見守り隊(市職員)」,「第2週」は「民生委員・ボランティア」,「第3週」は再び「見守り隊(市職員)」,「第4週」には「ふれあい相談員」*2と,隔週で実施されている予定という.
本記事を拝読させて頂くと,同取組では「75課の係長代理級以上計約400人」が訪問されている模様.つまり,「ひとり暮らし高齢者」のうち「特に重点的な見守りが必要な」方が「450名程度」とすれば,お一人の高齢者に対してほぼ一名の市職員ともなり,「気軽に相談できる」「かかりつけ医」*3ならぬ,「かかりつけ職員」とも整理ができそうな体制で対応されている模様.見守りの実施は地域の各団体,その活動支援を自治体という「公私二元論」*4から解されそうな「見守り」の取組.同市のように,自治体も実施を担う「公私融合」*5の取組としても整理ができそう.興味深い.

*1:太田市HP(組織・電話番号企画部-企画政策課庁議(資料公開) 平成24年度庁議資料(平成24年8月8日開催分ダイジェスト))「太田市おとしより見守り隊事業について

*2:前掲注1・太田市太田市おとしより見守り隊事業について)

*3:結城康博『医療の値段』(岩波書店,2006年)98頁

医療の値段―診療報酬と政治 (岩波新書)

医療の値段―診療報酬と政治 (岩波新書)

*4:稲継裕昭・山田賢一『行政ビジネス』(東洋経済新報社,2011年)73頁

行政ビジネス

行政ビジネス

*5:前掲注4・稲継裕昭・山田賢一2011年:67頁