民主党・かながわクラブ県議団(手塚悌次郎団長、三十六人)は六日、議員の政策立案力向上に向け、議員提案の政策条例作りに必要な法務知識について学ぶ講座を開講した。今後の条例案作りでは検討過程を会派のホームページで情報公開するほか、県民から意見を募る会合を地域で開くなどして県民参加型で進める。計画では、研究者や三重県議らから政策条例作りの基礎知識を学ぶ講座を八月までに計八回程度行う予定。その後、具体的な条例案作りに入るという。会派の政策立案過程で助言を仰ぐ顧問に、元横須賀市職員の出石稔・関東学院大学教授(地方自治論)が就いた。
 この日、県参与の磯崎初仁・中央大学教授(地方自治論)が、分権時代の地方議会の在り方について講演。議員提案条例にふさわしい条例として、「縦割りや前例踏襲の行政からは出てこない発想に基づいた条例や、地域の現場の声に根ざした条例」などを挙げた。

同記事では,神奈川県議会の会派で,条例制定に関する講習会を開催し始めることを紹介.県民からの意見交流の機会も設ける仕組みとするとのこと.「条例作りの検討過程」が具体的にはどのレベルまでを開示することになるかは興味深い.
小林良彰先生等が2005年に行われた県議会議員に対する意識調査結果(回収率39%)によれば,政策立案活動に積極的な姿勢である議員とは,自分の信念で活動する議員(「信託型」)であり,更には,議会事務局体制に満足している議員であること,そして,政策立案活動に積極的な姿勢である議員は実際にも議員提出条例の提出経験の割合が最も高い*1,という分析結果が示されている.つまりは,政策立案に積極的になるためには,議会事務局という補佐体制の拡充がまずは課題といえる.実際にも,同調査の結果では「議会事務局の機能を明確にすべき」という回答は98.2%もある.
個人的には,全国都道府県議会議長会の調べでも明らかにされている*2,知事部局と議会事務局の「併任職員」の目的や実際の機能に関心がある.併任された職員さん達は,「ジキルとハイド」の如く,ある時は議員のため,ある時は知事のために東奔西走されているのだろうか(どの局面がジキルかハイドかは別にしても).誰か,政治学者,行政学者の何れでもよいので,知事の政党性や政策状況等と併任職員の関係や,その執務形態について,量的・質的分析,そして歴史的分析を加えて,研究してもらえないだろうか.自治体における政治と行政の融合度を見るには丁度良い指標(事象)と思うのだが.
「では,ご自身でおやりなれば」ともいえるが,自治体行政の観察対象としては必要性は感じながらも,距離を置いている観察対象の一つが議会であったりする.以前も,議員さん達向けの研修会での講師業のお誘いを頂いた折もお断りをしているほど,何だか苦手意識もある.苦手といっても忌避ではなく,「生業は「行政」研究ですから」という至って単純な理由だが,実際の自治体行政の現場からすれば,そんな素朴な「政治・行政分離論」は自治体行政観察には許されまい.反省.

*1:中谷美穂「地方議員の役割意識」小林良彰・中谷美穂・金宗郁『地方分権時代の市民社会』(慶應義塾大学出版会,2008年)112〜113頁

地方分権時代の市民社会 (叢書・21COE‐CCC多文化世界における市民意識の動態)

地方分権時代の市民社会 (叢書・21COE‐CCC多文化世界における市民意識の動態)

*2:全国都道府県県議会議長会HP「全国都道府県議会の概況」『全国都道府県議会事務局職員配置状況一覧表』(平成19年7月1日現在)5頁