高山市上三之町にある古い町並みの一角に17日、「古い町並み総合観光案内・物産案内所」がオープンした。県が民間委託した空き店舗活用事業だが、約30メートル西には市の総合観光案内所「飛騨高山まちかど観光案内所」があり、市民からは「同じ場所に二つも案内所はいらない」と疑問の声も上がっている。(赤塚堅)
 空き店舗活用事業は、県の緊急経済・雇用対策として、同市の印刷会社「山都印刷」に1年間、空き店舗4店舗の運営と失業者8人の雇用を委託した。事業費は約3660万円。しかし、17日にオープンできたのはこの総合案内所と民芸品店の2店舗だけ。残り2店舗とは所有者と交渉中で、7月下旬の開業を目指すという。県商業流通課の桂川淳課長は「今回の総合案内所では、おいしい飲食店の紹介など、市の総合案内所にないサービスもできる」とアピールするが、地元では「同じ場所に二つの総合案内所があっても全く意味がない。県の委託事業で土産物店もでき、他店舗と競合するのは明らか」と批判する人もいる。
 市商工観光部では、「県から空き店舗を喫茶店として活用し、店の一角に情報コーナーを設けると聞いていたので、地元商店街の人たちとともに納得していた」と打ち明け、「まさか総合観光案内・物産案内所という話となっていたのでびっくりした。市民からの苦情や問い合わせも多い」と困惑した様子で話していた。

同記事では,高山市内において,同市が設置している総合観光案内所に近接した地域に,同市が位置する岐阜県が空き店舗を活用して設置する総合案内・物産案内所が設置されたことを紹介.同県の同取組については,同県HPを参照*1
同県の同取組では,「年間450万人の観光客が訪れる高山市における中心市街地の空き店舗等を活用」することで,「商店街の特徴ある他店舗と連携を図」り,「集客拠点となる施設を開設し運営を行う」ことが目的.同記事で紹介されている観光案内・物産案内所については,「店舗内」で,常設の地域情報及び商店街の情報発信・案内コーナーを設置」し,「情報発信・案内コーナーは,高山市を中心とする飛騨圏域の観光・物産関係機関との連携を図り,タイムリーな情報(観光・物産パンフ等)発信と観光客等への適切な案内を効率的な運営体制及び方法で実施する」ことが想定されている,という.
2009年4月26日付の本備忘録でも取り上げ,先般,総務省より同局に対して「厳重注意の行政指導」*2が示された「二重行政」問題.2008年4月29日付の本備忘録において紹介した,財団法人東京市政調査会による編集の『大都市制度史(資料編)Ⅳ』(指定都市市長会,2006年)内に集録されている「二重行政」に関する資料に基づけば,同記事の内容こそがまさに「行政サービス重複提供型」*3ともいえる形態として「二重行政」として整理できそう.両業務が,各主体の「(法定外)自治事務*4であるとすれば,双方が同種(よもや,同一)の観光情報提供の業務を担うことで,図らずも情報提供競争になり,結果的に「両方が自分に有利な戦略を選ぶと双方に不利な結果となってしまう」「チキンゲーム(chicken game)」*5となる蓋然性も低からずあるようにも考えられる.果たして,どのように両主体間での均衡が図られるのか,要経過観察.

*1:岐阜県HP(記者発表資料平成21年度記者発表資料一覧)「空き店舗を活用したまちなかへの誘客・回遊性向上事業を実施します〜ふるさと雇用再生特別基金事業〜」(平成21年6月12日県政記者クラブ高山市記者クラブ配布資料)

*2:朝日新聞(2009年6月5日)「総務省、TBSに厳重注意 報道に「重大な過失」

*3:財団法人東京市政調査会編『大都市制度史(資料編)Ⅳ』(指定都市市長会,2006年)1112頁

*4:北村喜宜『分権改革と条例』(弘文堂,2004年)90頁

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*5:渡辺隆裕『ゼミナールゲーム理論』(日本経済出版社,2008年)72頁

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  • 購入理由:ここ数週間,目を三角にしながら業務に追われていたため,書籍購入への意欲も余り湧かず.やれやれ困ったものと思い,書棚に平積みの楽しそうな本をパラパラと購入.