障害者への差別撤廃を目指す「障害のある人もない人も共に生きる熊本づくり条例」が1日、熊本県議会で全会一致で成立した。2006年に国連総会で採択された「障害者権利条約」を受けて制定された国内の条例としては九州で初めて。都道府県で4例目。条約がうたう「差別の禁止」を柱に、障害者への不利益な行為を禁止し、専門の相談員を置くなど問題解決のための仕組みを盛り込んでいる。施行は来年4月。だが「差別の定義」など今後議論を深めるべき課題も残った。
 条例は、差別する人に制裁を加えることではなく、当事者同士が話し合い、解決策を探る中で差別をなくしていくことを目指す。労働や医療、教育など生活の場面ごとの8分野11項目にわたり、障害者への不利益な取り扱いを禁止する。労働では障害を理由にした不採用などが想定される。これらの行為で障害者が「差別された」と感じた際は、県が委託する相談員が事情を聴き、「差別をした」側を含め、話し合う。解決しない場合は、県が設ける調整委員会が助言やあっせんに乗りだし、悪質なケースは知事が勧告するほか、会社名の公表もできる。
 国連の条約採択を受けた都道府県の条例は千葉県、北海道、岩手県で制定。ただ条約が、障害者への差別と定義する「合理的配慮の欠如」をめぐって、熊本を含む4道県の解釈が分かれている。「合理的配慮」については4道県とも、建物の入り口にスロープを設けるなど「障害者が日常で受けている制限をなくすこと」としている。相違点は、その配慮が欠けた場合に即「差別」とみなすかどうか。最も厳格とされる千葉県は「合理的配慮の欠如」は差別と規定し、配慮を義務化した。他の3道県は少しずつ異なる。
 熊本県は、欠如を差別とまではせず、配慮は求めるが、義務付けはしない。配慮の具体化には経済的負担も伴うため、余裕のない企業には実施が困難との反発があったためだ。逆に、県内の障害者団体などから「差別の定義があいまいになった」と批判も出ている。熊本県の条例検討委員会の委員長を務めた良永彌太郎・熊本学園大教授は「『何が差別なのか』という点も含め、条例の仕組みの中で障害者と健常者が話しあい、理解しあうことが大切だ」と話した。

本記事では,熊本県において,「障害のある人もない人も共に生きる熊本づくり条例」が成立したことを紹介.本記事後段では,既に制定されている千葉県*1,北海道*2岩手県*3とも条例内容を対比されており,参考になる記事.
7月1日の同県議会にて可決された同条例*4.現在のところ,「平成23年4月7日(木曜日)から平成23年5月6日(金曜日)」の期間で,同条例に対する意見の募集結果と,それらへ同県の考え方*5を拝読することは可能.ただ,同条自体は,県HPでは確認できず,残念.
本記事でも紹介されている同条例における「定義」に関しては,意見の募集では「53件」の意見のうち「11件」があり,「不利益取扱いの禁止」の17件に次いで多くの意見が提示されている.本資料を拝読させて頂くと,「個人の属性としての機能障害」とともに「社会との相互作用からも生まれる」「障害」*6の定義も含まれていそうではあることに加えて,「列記方式」*7を採用せず,概括的な規定とされたことにより,11の意見が提示されている模様.上記既制定自治体での条例「定義」に関しても,公表後,要確認.