地方自治職員研修 2012年 07月号 [雑誌]

地方自治職員研修 2012年 07月号 [雑誌]

伊藤正次先生より,ご恵与賜りました.ありがとうございました.伊藤先生は,「大都市制度改革論と「特別自治市」構想」(18〜20頁)をご寄稿されております.
特別自治市」構想の歴史的な位置づけとともに,「移行コスト」をめぐる制度化と移行までの,「適用対象」「移行手続」「住民自治」という3つの課題から論じられております本稿を通じて,日本における大都市制度の可能性に関して,改めて考えさせて頂く機会ともなりました.まさに「「二度あることは三度ある」結論に終わる」のか「「三度目の正直」に結びつくのか」(20頁),下名も観察を続けて参りたいと存じております.
心より御礼を申し上げます.誠にありがとうございました.

 県から権限と税財源を得て独立する「特別自治市制度」の実現に向けて大綱策定を進めている横浜市は21日、大綱素案の骨子を発表した。18日に市会常任委で示した骨子案とほぼ同じで、7月により具体化した素案(たたき台)を公表する。市民や市会、県などの意見を踏まえ、年内に大綱をまとめて国に法改正を求めていく。
 骨子は趣旨、制度創設の必要性、制度の骨子、移行に向けた手続き、創設までの間の取り組み―の5項目で構成。市は現行制度の中でも、県と事務配分の見直しなどを協議し、二重行政の解消を進めたい考えだ。さらに特別自治市制度に関しても意見交換をして理解を求める。市大都市制度推進課は「特別自治市の実現で市民生活がどう良くなるのか、分野ごとに分かりやすく示していきたい」と話している。

本記事では,横浜市における「横浜特別自治市大綱素案(骨子)」の公表を紹介.
2012年3月30日付の本備忘録にて記録した同市に設置された「大都市自治研究会」による「第1次提言」*1を踏まえて,同市が策定された「大綱素案(骨子)」*2
特別自治市」構想自体が元来「シンプル」*3なものであるためか,今回の「大綱素案(骨子)」も同制度が創設が「求められる背景・必要性」,「制度の骨子」,「移行に向けた手続等」,同制度の「創設までの間の取組」の4項目と限られており,その記述もいずれもシンプル.権限,財源,広域,狭域の四事項を骨太に記載されている.
具体的な制度の骨子の内容は次の通り.まず権限に関しては「現在県が横浜市域内において実施している事務及び横浜市が担っている事務の全部を処理」することを「原則」とすること,二つめの税収に関しては,「現行の県税のうち横浜市域部分と市市税の全て」となる「市域内地方税」「を賦課徴収」とすること,そして三つめの広域に関しては,「希望する近隣市町村を会わせた圏域を設置」したうえで「定住自立圏の仕組みに準じた近隣市町村との水平的・対等な連携協力関係を維持・強化」すること,あわせて「県との間」で「法律による協議の場を設置する」こと(あれ,この提案,「大都市自治研究会」の「第1次提言」内で記載されていたでしょうか.要確認),最後に,狭域に関しては「都市(市域)全体で一体的なまちづくりや地域間のバランス調整,行政運営の効率性と住民自治を両立できる行政区」*4を置くことが提案されている.
「今後」は同「大綱素案(骨子)」をもとに,「市会と議論を重ね」「市民,県,県内市町村,経済団体等の意見も参考」としたうえで,「横浜特別自治市大綱を策定」*5される方針にあるとともに,上記の通り,「現行の地方自治制度下」でも「二重行政の弊害が解消され」「市民サービスの向上」*6に結びつけるためにも,「教育(義務教育),子育て(幼保),医療計画,文化,企業助成,職業訓練,都市計画,河川(二級河川等)等」の「分野」を例として「段階的に県と協議を進め」*7ていく方針ともある.そのため,現行制度をめぐる協議と将来制度をめぐる協議の二層の協議を同時並行的に開催されることにもなりそう.
上記の「大都市自治研究会」による「第1次提言」が述べた,「「暗い未来」への対処,いわば「最悪回避戦略」」*8に関しては,同「大綱素案(骨子)」のシンプルさゆえか,必ずしも明記はされていないものの,自明のことなのだろうか.今後の同「大綱素案(骨子)」を起点とした二層協議の過程は,要経過観察.

*1:横浜市HP(政策局大都市制度推進室大都市制度推進課横浜市大都市自治研究会)「横浜市大都市自治研究会 第1次提言」(横浜市大都市自治研究会,平成24年3月)

*2:横浜市HP(記者発表資料2012年6月横浜市の目指す新たな大都市制度について「横浜特別自治市大綱素案(骨子)」を取りまとめました)「横浜特別自治市大綱素案(骨子)」(横浜市平成24年6月)

*3:伊藤正次「大都市制度改革論と「特別自治市」構想」『月刊地方自治職員研修』634号,2012年7月号,19頁

地方自治職員研修 2012年 07月号 [雑誌]

地方自治職員研修 2012年 07月号 [雑誌]

*4:前掲注2・横浜市(横浜特別自治市大綱素案(骨子))2頁

*5:前掲注2・横浜市(横浜特別自治市大綱素案(骨子))1頁

*6:前掲注2・横浜市(横浜特別自治市大綱素案(骨子))3頁

*7:前掲注2・横浜市(横浜特別自治市大綱素案(骨子))3頁

*8:前掲注3・伊藤正次2012年:19頁