千代田区岐阜県高山市は二十六日、森林整備事業で協定を結んだ。区は十年間、高山市の市有林の間伐に協力し、二酸化炭素(CO2)を吸収する森林を育てる。区によると、CO2削減で長期の協定は都内では珍しい。江戸城があった千代田区と、幕府の天領だった高山。地球温暖化対策でも協力し、新たな歴史を築く。 
 市は協定に基づき、毎年度十ヘクタールの間伐作業を二〇二一年度まで、継続的に実施する。区は森林整備の費用から、国、県の補助金を差し引いた経費の二分の一、年間百八万円を負担する。区は〇七年に地球温暖化対策条例を制定し、CO2の排出量を二〇年までに一九九〇年比で25%削減する目標を掲げる。しかし、排出量が思うように減らない恐れもあり「さまざまな対策をとっているものの、現実が進まない中、地方都市と連携することにした」(石川雅己区長)。高山市の森林整備で増えるCO2吸収量は、区内からのCO2排出量と相殺して考え、目標達成につなげる。森林整備を十年間継続すると、トータルのCO2の吸収量は四千二百九十トンになるという。区内の一般家庭が年間に排出する量の千百三十世帯分に相当する。
 石川区長、国島芳明(みちひろ)市長はこの日、区役所での締結式で協定書に署名し、がっちり握手した。全国街道会議などで関係を築いた両区市は、環境、自然保護への取り組みで結び付きを強めている。区民は生物多様性の学習ツアーで高山市を訪ねたり、市の桜を千鳥ケ淵に植樹したりしてきた。石川区長は「環境をキーワードに、さらに人的交流が活発になれば」とあいさつ。国島市長は「江戸城があった千代田区と、幕府の天領だった高山との協定は意義深い。都会と中山間地が手を結ぶモデルケースになれば」と期待している。(井上幸一)

本記事では,千代田区高山市における森林整備事業に関する協定締結を通じたカーボン・オフセットの取組を紹介.同協定の概要は,同区HPを参照*1
同協定では,「毎年度10haの間伐作業を10年間継続的に実施」し,これにより整備された「森林の二酸化炭素吸収量」を同「区内からの二酸化炭素排出量と相殺」することを想定.具体的には「10ha間伐した際の1年目のCO2吸収量」は「78t-CO2」,これを「10年間継続した場合」には「4,290t-CO2」となることを想定している.同区では同市に対して「森林整備に係る経費から国・県の補助金を差し引いた経費の2分の1の金額を負担金」として同市に支払い, 同市では「毎年度ごとに計画書を区に提示」する.同市では「森林整備」による「対象区域」の管理,「森林整備に関する国等の補助金の申請及び二酸化炭素吸収量の認証に係る申請」を行い,また,「森林整備実施,対象区域の管理,看板設置に係る経費」は「負担する」*2.なるほど,興味深い.
日本一広い面積を持つ同市は,「森林面積においても日本一広い市」.同市域の「92.1%」が森林となり,そのうち国有林が40%,民有林が「60%」を占めており,「国有林の占める割合が高い」*3ことも特徴とされている.一方,本記事では,同事業の対象は「市有林」とも紹介.同市内での市有林は「3.87%」*4と全ての森林からすれば限定的.同協定でも市有林に限定されているのだろうか.また,同区から同市への具体的な負担金総額は,上記,同区の紹介及び本記事からは判然とはしない.「市有林」への国県補助を除く「2分の1」となると,同市の森林整備にとっては,「若干の手当」に留まることなく,「「追加的な」財源」*5ともなるのだろうか.具体的な負担額は要確認.

*1:千代田区HP(区政情報広報・広聴・相談・情報公開)「平成24年6月26日 高山市と「森林整備事業」に係る協定を締結

*2:前掲注1・千代田区([平成24年6月26日 高山市と「森林整備事業」に係る協定を締結)

*3:高山市HP(市の組織農政部 林務課)「高山市森林整備計画(平成22年4月1日〜平成32年3月31日)参考資料(1)」105頁

*4:前掲注3・高山市高山市森林整備計画(平成22年4月1日〜平成32年3月31日)参考資料(1))106頁

*5:石崎涼子「森林政策における政府間財政関係」諸富徹・沼尾波子『水と森の財政学』(日本経済評論社,2012年)32頁

水と森の財政学

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