有田市は、財政難から職員と特別職の退職手当を削減する条例改正案などを29日開会の臨時市議会に提案する。同市によると、退職手当まで踏み込んで削減するのは全国的にも珍しいという。
 改正案では職員の退職手当を平成21年度から5%、22年度から10%削減し、21年度以降10年間で約3億3200万円の削減になるという。また、市長と副市長はいずれも21年度から各約15%削減する。臨時市議会にはこのほか、職員の給与削減率を引き上げる条例改正案も提案する。これによると、21年度から課長級以上の管理職で現行の6%から8%に、一般職で3%から5%に改正する。市長の報酬はすでに30%、副市長は25%削減している。改正案は厳しい財政状況が背景にあり、望月良男市長は「組合との交渉を粘り強く続けてきた。給与についても職員の何とかしなければとの思いが妥結につながった」と話している。

同記事では,有田市において,職員(一般職・特別職)退職手当を削減する条例案が上程される方針であることを紹介.同市HPに掲載されている「人事行政の運営及び給与・定員管理状況」を拝見すると*1「年齢別職員構成の状況」では,職員525名中(普通会計部門職員数(330名)と公営企業会計部門職員数(195名)の総和)のうち,52−55歳が17.1%,56−59歳が14.2%とあり,50代の職員構成割合が高い状況にあり,今後10年間で定年退職が見込まれ,相当額の支給が開始される同世代に対する退職手当分を抑制することが目的なのだろうか.また,同市も職員組合と間での意識の共有化に基づく交渉の苦労が偲ばれる取り組み.個人的には,退職手当もまた抑制されるのかとも驚き.他の自治体でもどのような状況にあるのだろう.
地方自治法204条2項に基づき支給できるとされる退職手当.退職手当制度が自治体間での制度の共有化(標準化)に至るまでには,「国家公務員のそれとの均衡」とともに,「恩給,失業保険制度との関連において,国の場合に準じて措置されるべき」として「自治省の行政指導も退職手当制度に関する法令の改正に並行して通知」*2が示されてきたと回顧される.下名個人的には,年金制度と関係からも退職金制度が持続される意義がいまひとつよく整理がつかない部分は残るものの,一般的には退職金制度は,通算制度を採用することもあり,これにより「離職率抑制効果」をもたらし,従来の我が国の企業では「雇用期間中は生産性より低い賃金を与えておいて,最後まで怠けないで働いた者だけに,初めて退職時に高い金額の退職金を支払うという制度だと解釈」*3が示されてきた.公務員の人事管理においても適用しうるのだろうか.要観察.
雇用システムが「それぞれは独立して存在しているのではなく相互補完関係にある」*4ことからすれば,確かに,財源という一定量のパイの確保という前提条件はあるものの,退職金の抑制策のみならず,同市が「平成18年12月から管理職(課長級以上)を対象とした勤務実績・能力態度に基づく人事評価」*5を導入されている取り組みを,より広い職層にまで採用することも一方策としては適当とも考えられそうか.ただ,厚生労働省による「就労条件総合調査」の2007年の調査結果を拝見すると,「退職給付を縮減し基本給へ組入れ」に関しては,1.1%*6と民間企業においても採用割合が低いことは確か.現実的ではないか.

*1:有田市HP(給与:人事行政の運営及び給与・定員管理状況)「人事行政の運営及び給与・定員管理状況」8頁

*2:瀧野欣彌編『地方公務員制度3 給与・旅費・公務災害補償』(ぎょうせい,1991年)225頁

給与・旅費・公務災害補償 (地方公務員制度)

給与・旅費・公務災害補償 (地方公務員制度)

*3:大竹文雄労働経済学入門』(日本経済新聞社,1998年)111頁

*4:久本憲夫「日本的雇用システムとは何か」仁田道夫・久本憲夫編『日本的雇用システム』(ナカニシヤ出版,2008年)10頁

日本的雇用システム

日本的雇用システム

*5:有田市HP(給与:人事行政の運営及び給与・定員管理状況)「人事行政の運営及び給与・定員管理状況」「給与・定員管理状況」4頁

*6:厚生労働省HP(厚生労働省統計表データベースシステム・統計調査別公表データ)「就労条件総合調査 平成19年」(特に,「第31表 産業・企業規模,職層,過去3年間の賃金制度の改定の有無,改定内容別企業数割合」)