地方分権改革推進委員会の第2次勧告で提案された国の出先機関の定員(約3万4600人)削減と厚生労働省都道府県労働局の廃止について、政府は年度内にまとめる出先機関改革の工程表に盛り込まない方針を固めた。削減定員の約3分の1がハローワークの統廃合によるもので、「派遣切り」など未曽有の雇用危機への対応には現体制の維持が不可欠と判断した。来週にも開かれる政府の地方分権改革推進本部(本部長・麻生太郎首相)で正式に決定する。
 分権委が昨年12月にまとめた第2次勧告は、ハローワークが担う職業紹介事業を地方自治体に移管し、職員も自治体に移して1万1000人が削減できると指摘した。労働基準監督署ハローワークを所管する都道府県労働局を地域ごとに統廃合し、厚労省地方厚生局との統合を求めた。これを受け政府は今後の出先機関改革の道筋を付ける工程表の策定作業を進めていたが、「今の状況で労働局の廃止やハローワークの定員削減を打ち出すわけにはいかない」(内閣府幹部)と判断。雇用状況改善のため、首相が与党に追加経済対策を検討するよう指示したこともあり、工程表への明記は見送ることになった。
 政府は、第2次勧告が求めた、国土交通省地方整備局など4省6機関を廃止して「地方振興局」(企画部門)と「地方工務局」(公共事業担当)に再編する案も工程表に盛り込まない方針も固めた。【石川貴教】

同記事では,地方分権改革推進委員会の『第2次勧告』をもとに,政府において策定する工程表において,「地方振興局」「地方工務局」を掲載せず,更には,厚生労働省都道府県労労働局を廃止し「地方厚生局と統合」*1する案については,今回の工程表内には掲載しない方針であることを紹介.今週前半の「台湾経験」から戻ってみると,地方分権改革の情勢が少し変化していた模様.
同記事の内容について,振り返ってみると,同勧告の最終的な審議が行われた2008年12月8日開催の第69回委員会では,ハローワークの1万2,000人の自治体への「移管」論を巡り,委員長代理からは「私は,それには絶対反対です.今、ここにわざわざ「現下の厳しい経済・雇用情勢にかんがみ」と書いてあるとおり,本当にそういう状況であるわけです.今,ハローワークの窓口に来ている失業者等は,従前の倍以上になっています.大変な人数が各地のハローワークに押し掛けている状況です.麻生政権が,目下最も力を入れているのは雇用対策であり,雇用対策をめぐって次々に総理から指示が出ているわけです」として,「幾ら「将来的に」と書いてあっても,1万2,000人は無くすのだという話が,今,受け入れられると思いますか.それは恐ろしく政治の現実から外れていますよ」*2という「政治の現実」論と,「できる限り地方に移せるものは移していく,都道府県に移せるものは移していくのだという考え方」(23頁(委員長発言))からの理念的立論から,掲載の判断が分かれた事項.
同記事の内容が工程表として,来週開催とされる地方分権改革推進本部において決定されるとなれば,同論議については「地方分権改革推進委員会が成果をあげるには」「政治主導で決断されないかぎり実現できないもの」*3という「クールな認識」*4通りの結論とも言えなくもない.ただ,同勧告に対して,同委員会で追加承認された『決議』*5における「将来的な35,000人程度の出先機関職員削減数を目標として設定」という文言を踏まえると,同工程表内に同数値を未記載となることが想定し難いが,結果的には「遅滞」*6のパタンとなるのだろうか.要観察.

*1:地方分権改革推進委員会HP(委員会の勧告・意見等)『第2次勧告 〜「地方政府」の確立に向けた地方の役割と自主性の拡大〜』(平成20年12月8日)』37頁

*2:地方分権改革推進委員会HP(第69回:2008年12月8日開催)「第69 回 地方分権改革推進委員会 議事録」23頁

*3:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)209頁

地方分権改革 (行政学叢書)

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*4:今村都南雄『ガバナンスの探求』(勁草書房,2009年)267頁

ガバナンスの探求―蝋山政道を読む

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*5:地方分権改革推進委員会HP『決議』(2008年12月16日)

*6:大杉覚「行政改革と地方制度改革」西尾勝村松岐夫『講座行政学第2巻 制度と構造』(有斐閣、1994年)323〜324頁

制度と構造 (講座行政学)

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