先週末に手元に届いた行政学会の年報.下名の狭隘な関心のため,毎号毎号勉強をさせていただく内容が満載ではある同誌ではあるものの,その狭隘な関心しかない下名が「あ,やられたなあ」と思ったのが(本当か?),2008年3月11日付の本備忘録でも取り上げた東京事務所をテーマに書かれた同論文.下名個人の自治体行政観察上の関心のツボに完全に入っており,正直なところ,下名も観察を重ねて,書いてみたいなあと思っていた観察課題.
都道府県東京事務所の「不要論」(175頁)に対する,現況やその可能性を示す本稿ではあるもの,下名が思う眼目は,やはり都道府県東京事務所に所属されている職員の皆さんの日常行動の観察結果にこそあると思われる.例えば,同稿では,都道府県東京事務所の役割として,国レベルとの「連絡調整・情報収集」の観点からその特質を描いている.特に,情報の「公表レベル」(174頁)から,「公表済の情報」,「近日公表予定の情報」,「非公表の情報」(「情報の背後に存在する深層情報」とも整理)に,情報の特性別に分け,都道府県東京事務所では,後者の2つの情報の収集する様子を描く.
つまり,「さまざまな関係者と接触し,少しずつ得た断片的な情報を繋ぎ合わせて総合的に判断していく」ことが行われており,そのためにも「営業サラリーマンのような地道な活動が求められる」(同頁)とあり,そのためにも「東京事務所の職員は省庁に日参」(175頁)することになるという.同稿では,このような「日参」によって得られる情報は,「電話やEメールでは窺い知れない微妙なニュアンスを表情や態度から読み取ること」(176頁)ができるともあり,更には単に情報を受容するだけではなく,「改まった関係でないため非公式の事前相談・打診も行いやすい」ため「取捨選択の自由が原則的に全面的に留保されており,着手前の段階で非公式の相談打診が可能なのは大きなメリット」(同頁)と,交渉協議の効用もあるという.なるほど.
同稿を拝読すると,ここでいう「微妙なニュアンス」がより具体的には如何なるものなのか,また,これらの対人技能や情報収集・分析技能が,都道府県東京事務所に所属の職員の皆さんにおいてどのように形成されていくのか(又,所属職員の皆さんのキャリアパスとの関係性等)と,種々考えてみると更に観察をしてみたくなる興味深そうな課題が更に沸いてくる.
その他にも「「霞ヶ関特急便」と呼ばれる一五人乗りのマイクロバス」(173頁)のお話等は一重に楽しく,自治体行政観察のうえでは,今後も参照すべき一本.