維持費がかかる公衆トイレを財源に−。東京都渋谷区が区内の公衆トイレ14カ所の命名権ネーミングライツ)を募集、このほど最初のスポンサーにトイレの総合サービス業「アメニティ」(横浜市)が決まった。
 公衆トイレの命名権募集は、財政再建を進める北海道夕張市の導入例があるが、渋谷区は「渋谷という土地の持つ影響力や広告効果は大きい」と新たな財源の確保に期待を寄せている。渋谷区は1月末、区内にある公衆トイレのうち公園内にあるものを除く14カ所の命名権のスポンサーを募集。東北や関西の企業も含め25件の応募があった。応募企業からの提案を基に、区は名称や契約料、設備管理といった条件からアメニティなど数社を選んだ。命名権を得た企業は、独自の名称を付けた看板を設置できるほか、区の所有地にある7カ所のトイレには広告も出すことができる。
 アメニティは区役所前にあるトイレの命名権を獲得。今月11日、トイレを管理する社内検定名「トイレ診断士」を盛り込んだ看板「区役所前 トイレ診断士の厠堂」を掲げた。命名権料は年10万円。3年契約で、設備の補修や巡回費用も負担する。

同記事では,渋谷区における公立公衆トイレに対する命名権について紹介.同施設への命名権募集に関する内容については,同区HPを参照*1.同区では,命名権を通じて,「新たな財源を確保し、区民等が快適に利用できるよう施設を維持管理するとともに,利用者サービスの向上と地域環境の改善を図る」ことが目的とある.2009年5月12日付の産経新聞の報道を拝読すると,募集の経緯としては,「締め切り直前まで応募がゼロだった」ものの,「直前になって25件の応募が殺到」*2されたとのこと,同トイレが第一号.
命名権を通じて,公立公衆トイレという施設空間を,「自分だけの空間を心ゆくまで独占して,落ち着いた心理状態で用を足せる」*3以上の効用を期待されるいる.同記事にもある命名権を取得した同社では,「底的なトイレ診断を実施したところ,この公衆トイレの環境は,汚れや臭気の問題のみならず,機器の破損等のトラブルが多く見られました」との観察結果とともに,「単なるトイレの命名のみならず,設備・機器の清掃の実施によって現状のトラブルの改善,アメニティのオリジナル製品・機器の設置をはじめ,今後3年間にわたり,定期訪問による診断・維持管理サービスと,定期的なトイレパトロールを実施」*4との管理・補修を含むことになる.2009年5月2日付の毎日新聞の報道を拝読すると*5,同じくトイレの命名権を募集した夕張市についても,命名権を通じて,利用再開されたとあり,広告収入ばかりではなく,そもそも再開という,いわば「外部性」を齎している.
公募しても募集する企業が限定されつつあるともされる命名権2008年12月7日付の本備忘録以来,本備忘録でのお馴染み妄想的観察課題,「庁舎管理の行政学」の観点からすれば,「第5章:財源としての庁舎」に該当するものの,その財源を豊かにするためにも,取得側の効用を満たす仕組みとして,広告以上の効果を期待できないものか,少し考えてみたい課題.