総社市は27日の今年度の職員採用2次試験の面接官に、民間企業の人事担当者6人を登用した。受験者に「市長に立候補するなら、どのようなマニフェストを掲げるか」を課題にプレゼンテーション(提案説明)とグループ討論をしてもらい、民間の面接官だけで審査した。地方の財政難などを背景に、コスト意識や時代に即した政策立案能力などを備えた人材を民間の視点で判断してもらう狙いだ。【井上元宏】
 対象は一般事務職の1次試験(筆記)を通過した51人。県内企業6社の人事担当者だけで審査する。受験者には事前に課題を伝えて準備してもらい、約10人ずつ入場。1人3分ずつ、ホワイトボードを使うなどして「市長候補」として具体的な政策提案を行ってもらう。さらに、10人で十数分間の討論を行い、グループとしての政策も提案してもらう。
 効率性のある政策立案能力やコスト意識、リーダーシップなどを判断する試験で、経営現場で人材を見分けてきた企業の人事担当者の“眼力”を借りる。市職員による個別面接もあるが、市はプレゼンテーションの採点を最重視するという。合格者は10人で、11月中旬に決まる予定だ。
 岡山大大学院地方公共政策コースの平野正樹教授(地方財政論)は「小回りの利く地方自治体は民間の発想を応用できる部分がもともと多い。地方の財政難などを背景に、効率性など民間の発想を取り入れようとする自治体は増えており、このような試験も増えていくのではないか」と話している。
 受験した男性(23)は「民間の面接官は公務員と違った視線の厳しさ、オーラを感じ、緊張しました」と話した。

同記事では,総社市における採用試験方式について紹介.2010年4月採用に際して,一次試験合格者に対する二次試験の一環として,「県内企業6社の人事担当者だけで審査」する方式も実施されたとのこと.
2008年8月20日付の本備忘録において記させて頂いた,昨年訪問し,「「地方自治の神様」の微笑み」を窺いつつ,大変勉強をさせて頂いた同市.同記事で紹介された面接方式の詳細を確認させて頂こうと思い,同市HPを拝見させていただくものの,把握できず,残念.ただ,「平成21年度総社市職員採用試験実施要領」*1のみは把握できたため,同要綱を確認させていただくと,「第2次試験」のうち「人物試験」として「個人面接,集団討論等」と記されており,同方式は,後者の集団討論で採用された模様.
2008年2月17日付の本備忘録では,多可町における管理職昇任試験の面接時での民間人を試験官として採用する取組について取りあげたものの,採用試験(特に面接又は集団討論時)においても,庁内外部の方が参加されること(特に,同市のように,庁内外部だけの方式をも併用すること)は,他の自治体においても,どの程度広がりがあるのだろうか.要確認.
もちろん,同記事においても記されているように,「コスト意識や時代に即した政策立案能力などを備えた人材を民間の視点で判断」という「規範化する眼差し」*2を通じた「試験=検査」により,職員候補者の振る舞いを方向付ける効果も想定はされそう.ただ,一方で,実際の業務においては,特定の規範のみならず,従来の執務慣行も存在し,その理解と合意を得ることも必要とも考えられる.そのため,同記事では同市においては「市職員による個別面接」の実施がなされることも紹介されてはいるものの,この「職員による個別面接」を通じて,「労働条件など伝えるべき情報はもちろん,悪い情報についても意識的に採用プロセスの中で開示する姿勢」である「ワクチン効果」*3をも組み入れることは肝要か.

*1:総社市HP「平成21年度総社市職員採用試験実施要領」(総社市職員任用委員会,平成21年7月)

*2:ミシェル・フーコー『監獄の誕生』(新潮社,1977年)118頁

監獄の誕生 ― 監視と処罰

監獄の誕生 ― 監視と処罰

*3:安藤史江『コア・テキスト 人的資源管理』(新世社,2008年)49頁

コア・テキスト 人的資源管理 (ライブラリ経営学コア・テキスト)

コア・テキスト 人的資源管理 (ライブラリ経営学コア・テキスト)