- 作者: 若田部昌澄,河野勝,竹森俊平,若田部昌澄「国家のリスク・マネージメント研究会」
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2009/10/02
- メディア: 単行本
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災害に対しては,「命令による統制」(290頁)への「ドクトリン」*1が共有されているものかと,専門外である下名は,印象論的に抱いておりました.しかしながら,本稿を通じて,米国における経験への分析を踏まえつつ,「政治的なリーダーシップを背景としながらも,基本的には各組織が独立した権限をもち,それらが目標を共有しながら相互に協力するネットワーク的な組織構造」(278頁)のメリットを分析されており,当方の偏向的な認識を改めさせて頂き,大変勉強をさせていただきました.
そして,水平的調整の意義の指摘に止まらず,現実の課題を踏まえ,「多様な主体の連携を促進する」ための仕組みの必要性,そして,何よりも「政治の役割」(300頁)については,2008年11月20日付の本備忘録におきましても取り上げさせていただき,その後も幾度も参照されせ頂いております,永松伸吾先生の御著書『減災政策論入門―巨大災害リスクのガバナンスと市場経済 (シリーズ災害と社会4)』からの一貫性を感じ,その考察及び主張の明晰さに,大変刺激をいただきました.
また,昨今のインフルエンザ等において,自治体においても,BCPの策定を行われつつあるなかで,これらの取組が本稿においてその課題として分析されている,「事前の計画による調整」(304頁)に止まるものであるのか,または,「「フィードバック型」の調整」(同頁)に結びつき得るものとなるのか,目覚めの一本として本稿を拝読させて頂き,その観察の必要性を考えさせられました.
心より御礼を申し上げます.誠にありがとうございました.
*1:牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会,2009年)20頁