長崎市は16日、英国商人トーマス・グラバーが幼少期を過ごしたスコットランドアバディーン市と初めて「市民友好都市」提携を結ぶと明らかにした。「姉妹都市」のような厳格な規定がない「都市縁組」で、長崎市が独自に制定した。同様の取り組みは各地で増えているといい、長崎市も民間交流の拡大を狙う。
 16日の市議会各派代表者会議で田上富久市長が報告した。両市間は、1996年からロータリークラブが奨学生相互派遣を行うなどしていることから、グラバーの長崎初訪問150周年の昨年、長崎市が提携を打診した。今月末に田上市長が確認書に署名して送付し、アバディーン市長が7月12日に署名する。
 長崎市の海外姉妹都市は米セントポール市など6都市。市民友好都市は、姉妹都市間の約5年ごとの公式訪問団派遣などの要件を満たさなくていいため、田上市長は「多くの都市と提携を進め平和の発信につなげていきたい」と話している。

本記事では,長崎市における「市民友好都市」の締結の方針について紹介.同取組に関しては,同市HPを参照*1
同取組は,「姉妹都市提携等の形式にとらわれず,自由,気軽に付き合え,市民や民間交流団体が主体となって実質的な交流を行うことを相互の都市が意思確認した都市」とのこと,一方で,従来からは「姉妹都市」では「共通の歴史や文化等を背景に、特定分野に限られない幅広い交流を行うもの」のの「最近では全国的にその提携数はあまり伸びておらず,そのかわり」として,「新たな都市間交流の形態」*2として同取組が採用された模様.
1955年に「日本最初の姉妹都市関係」を「セントポール市」*3と提携した同市.その後,「姉妹都市提携」の状況に関しては,例えば,財団法人国際自治体化協会による調べ(2010年5月31日現在)を拝見すると,全都道府県中40都道府県が姉妹都市を締結されており,その「姉妹提携件数」は「129」件となる,そして,市では「540」市による「1143」件,区では「21」区による「38」件,町では「203」町による「243」件,村では「35」村による「34」件であり,平成21年度の件数は1586件となり,平成元年では「761」件*4であったことと対比すれば約2倍であり,同集計結果からは,近年でも微増傾向にはあることは窺えそう(貴重な資料ですね).「外交も国の専権的独占は実質的にくずれさっている」*5として,「国際化と分権化はメダルの両面なのである」*6との見立ての達成度は判然とはしないものの,これらの蓄積は,興味深い.
「握手,公式声明,写真撮影」という「乾杯外交(三杯)外交」*7を超えた取組となるのだろうか,要観察.

*1:長崎市HP(文化観光部国際課国際交流都市間の交流)「市民友好都市とは

*2:前掲注1・長崎市(市民友好都市とは)

*3:プルネンドラ・ジェイン(今村都南雄監訳)『日本の自治体外交』(敬文堂,2009年)122頁(依然として,amazonでは掲載されていない模様)[rakuten:book:13166676:detail]

*4:国際自治体化協会HP(国際交流の支援国際交流調査 資料)「姉妹提携情報の収集・提供

*5:松下圭一『市民自治憲法理論』(岩波書店,1975年)52頁

市民自治の憲法理論 (岩波新書 青版 A-42)

市民自治の憲法理論 (岩波新書 青版 A-42)

*6:阿部斉・新藤宗幸『概説日本の地方自治』(東京大学出版会,1997年)199頁

概説 日本の地方自治

概説 日本の地方自治

*7:前掲注3・プルネンドラ・ジェイン2009年:123頁