安曇野市は、市ホームページと動画投稿サイト「ユーチューブ」上で「手話ニュース」サイトを7月から設けた。手話通訳士資格を持つ市社会福祉障害福祉係の深井恵子さん(46)が提案。市秘書広報課が、防災行政無線で流す重要な原稿を選んで、撮影、掲載している。県は、こうした情報告知を「県内市町村では聞いたことがない」(障害者支援課)としている。
 安曇野市は、11日投開票の参院選のお知らせや、豊科近代美術館周辺に建設を目指す市役所新本庁舎の設計に市民意見を反映させる会議への参加呼び掛け、県聴覚障害者情報センター(長野市)が29日に市内で開く「聞こえない人のための出張相談」など、4件の手話ニュースを5日までに載せた。それぞれ1分〜1分28秒の深井さんの手話映像で、説明文も添えた。
 市ホームページでは、これまで視力の弱い人や色の識別が難しい人も見やすいよう、色や文字サイズを変更する仕組みはあったが、深井さんが「文字だけより、手話の方が分かりやすい場合もある」と発案。「期日前投票」などは、手話の方が意味が伝わりやすいという。今後、2週間に1回程度、情報更新する予定。市秘書広報課は「耳の不自由な人が市政に関心を寄せてもらうきっかけになればうれしい」としている。
 県によると、深井さんは、県内市町村の正職員として唯一の手話通訳士。安曇野市では、旧5町村役場に置く総合支所など市役所機能が8カ所に分散している。耳の不自由な人が窓口を訪れた際の専門家がおらず、それぞれの現場で苦労していたという。このため、2009年度に深井さんを採用。同市穂高穂高健康支援センターに配置し、通訳対応を一本化した。

本記事では,安曇野市における広報の取組を紹介.都道府県レベルでは和歌山市が最初*1となる自治体におけるYouTubeを活用された広報の取組(市区町村レベルにおける,最初の自治体に関しては,未確認).同市では,「手話ニュース」サイトを設置.なるほど.同取組(実際の映像)に関しては,同市HPを参照*2
「電子空間だけがバリア・フリーとなり,現実空間がバリアに満ちたままであること」により「部分的にバリア・フリーな場所があるからこそ,うまくいかない時の反動がかえって非常に大きくなる」として「テクノロジー」の「両義性」*3への懸念が指摘されたことがあるものの,同市では,本記事でも紹介されているように「本庁舎の設計に市民意見を反映させる会議への参加呼び掛け」として「ユニバーサルデザイン市民会議(ワークショップ)」*4の設置も同サイトを通じて実施.同取組が契機となり,その両義性の克服は果たされるか,実際の活用状況等は,要経過観察.

*1:全国知事会HP(先進政策バンクその他)「全国に先駆けユーチューブで動画配信!〜和歌山県インターネット放送局〜

*2:安曇野市HP(暮らしの便利帳障害者)「手話ニュース

*3:石川准「障害,テクノロジーアイデンティティ」石川准・長瀬修『障害学への招待』(明石書店,1999年)70-71頁

障害学への招待

障害学への招待

*4:安曇野市HP(行政について広報あづみの2010年広報あづみの104号(6月23日発行))「広報あづみの」2010.6.23,6頁