京都市子育て支援策の一環として、市営住宅の入居条件の特例枠に、父子世帯を加えることを決めた。子育て世帯優先住宅の戸数も拡大する。11月下旬以降の入居分から適用し、9月1日に募集を始める。
 市は特定目的住宅として、母子世帯や障害者世帯など「限定枠」を設け、定期的に入居者を募集している。2008年度に市が実施した「市ひとり親家庭実態調査」で、父子世帯で転居希望がある人の半数が公営住宅への転居を望んでいることが分かった。これを受け、市は市営住宅の「母子世帯枠」を「ひとり親世帯枠」に変え、父子世帯も対象に含めることにした。
 今回募集する特定目的住宅は山科区伏見区などの85戸で、このうち、ひとり親世帯は37戸。9月1日から9日まで各区の福祉事務所で申し込みを受け付け、抽選会を開く。このほか、小学校就学前の子どもがいる親子世帯を対象にした「子育て世帯優先住宅」を昨年度の7戸から16戸に増やす。

本記事では,京都市における市営住宅の入居条件の取組について紹介.同取組の詳細については,同市HPを参照*1.先日,「シネマート新宿」にて鑑賞した,「グッドモーニング・プレジデント」のように,父子家庭であれば,その全てが大統領官邸のような空間に住めるわけでもなく,興味深い.
同取組は,同市が2010年3月に策定された『京都市住宅マスタープラン』において,「市営住宅の住宅セーフティーネット機能の充実」として「施策対象者の家族構成や規模に応じた適正な公募と住み替えの実施」*2と規定されたことに基づくもの.具体的には,「子育て世帯優先住宅について募集戸数」の「拡大」(「21年度7戸→22年度16戸」)と,現在は「母子世帯・4級以上の身体障害者がおられる世帯」*3を対象とされた「特定目的住宅」において「母子世帯に新たに父子世帯を加えた「ひとり親世帯」を募集対象」*4とするもの.
「母子世帯の子供の貧困率がきわめて高い」*5一方で,「貧困層にある子供がみな母子家庭の子供ではな」く,「最近増えている父子家庭も,経済的問題を抱えるものが少なくない」*6なかでの同市の取組.母子世帯,障害者世帯に加え,父子世帯への対象拡大により,換言すれば,「個人に焦点をあてる」*7路線の拡大として,同市営住宅にいう「特定目的」という「選別性」*8の希釈化とも整理ができそう.ただし,母子世帯,障害者世帯,父子世帯間での何れも一定数の募集がなされた場合,その結果に基づく「選別」はどのように進められるのだろうか

*1:京都市HP(市の組織都市計画局各課の窓口住宅政策課市営住宅)「平成22年9月市営住宅入居者の募集について

*2:京都市HP(市の組織都市計画局各課の窓口住宅政策課京都市住宅審議会(マスタープラン)京都市住宅マスタープラン(京都市住生活基本計画))『京都市住宅マスタープラン』(京都市,2010年3月)40頁

*3:京都市HP(市の組織都市計画局各課の窓口住宅政策課)「市営住宅

*4:前掲注1・京都市(平成22年9月市営住宅入居者の募集について)

*5:白波瀬佐和子『生き方の不平等』(岩波書店,2010年)47頁

生き方の不平等――お互いさまの社会に向けて (岩波新書)

生き方の不平等――お互いさまの社会に向けて (岩波新書)

*6:前掲注5・白波瀬佐和子2010年:50頁

*7:ポール・スピッカー『社会政策講義』(有斐閣,2001年)55頁

社会政策講義―福祉のテーマとアプローチ

社会政策講義―福祉のテーマとアプローチ

*8:前掲注7・ポール・スピッカー2001年:62頁