住民投票に拘束力
 総務省は今月召集の通常国会地方自治法の改正案を提出する。首長と議会の対立が先鋭化した名古屋市や鹿児島県阿久根市の事例を踏まえ、現在は首長だけに認められている議会の招集権を議長にも与えるなど、対立解消のルールを法制化する。また自治体が実施する住民投票について、行政への拘束力を持たせる。今年は統一地方選挙の年。地方自治の特徴である二元代表制の活性化と、住民の行政参加を促すことに主眼が置かれる。
 改正案では、自治体の基本構造の見直しや広域連携のあり方に加え、阿久根市の問題が関心を呼んだため、首長と議会の関係の見直しに重点が置かれた。現行の地方自治法は、首長にのみ議会の招集権を認め、議長や定数の4分の1以上の議員から臨時会招集の請求があった場合、首長は20日以内に招集しなければならないと定めている。しかし、首長が請求に応じなくても罰則規定はない。阿久根市長は議会側の招集請求に応じず、県知事の是正勧告にも従わなかった。このため改正案では、議長に臨時会の招集権を与え、首長による議会無視に歯止めをかける。また阿久根市長が議会を開かずに専決処分を繰り返したことを受け、副知事、副市町村長の人事を専決処分の対象から外すほか、専決処分がその後の議会で不承認となった場合は、実質的に無効となるよう補正予算案や条例改正案の再提出を義務付ける。
 片山善博総務相阿久根市の問題について「議会をそもそも開かないで専決処分をするのは根っこから違法だ。議会側が招集権を持つのは一つの解決方法だ」と話している。改正案ではこのほか、住民投票制度を拡充。自治体が条例で住民投票を定めることを前提に、投票結果に拘束力を持たせるのが特徴。投票の対象は一定の予算規模を超す大型公共施設など「ハコモノ」建設の是非などが想定され、過半数の賛成がなければ、中止や見直しを義務付ける。さらに議会の解散請求(リコール)をめぐって有効署名数が二転三転した名古屋市のケースを踏まえ、リコールの要件を緩和する。有権者が40万人以上の大都市では現在、(1)40万人の3分の1(2)40万人を超える部分の6分の1−−の合計数以上の署名が必要となっているが、「6分の1」部分を引き下げる。【笈田直樹】

本記事では,総務省において,次期通常国会地方自治法改正案を提出される方針であることを紹介.
本記事で紹介されている住民投票制度では,地方行財政検討会議が審議をされている,『「地方自治法抜本改正についての考え方(平成22年)」』では,「地方公共団体の存立に関わる基本的事項である市町村の廃置分合の是非,議会の議員の定数,また,今日,厳しい財政状況の中で,住民の多くが行政サービスに関する受益の負担,将来世代への負担のあり方に多大な関心を寄せている状況を踏まえて,大規模な公の施設の設置の方針などが考えられ,そのあり方について検討する」*1とも記載.継続的な検討の必要性の「考え方」が示されているようではあるものの,同検討も結論が示されたのだろうか.要確認.
地方分権とは結局は住民の政治参画機会を拡大すること」*2であり,「団体自治の強化も」「住民自治の強化を伴ってはじめて意味をもつもの」*3との認識を踏まえてか,本記事を拝読すると「自治体が実施する住民投票について,行政への拘束力を持たせる」とも報道.いわば,行政の意思決定・運営に対する「鑑別基準」*4は住民に委ねられた「拘束型」の制度案が検討されている模様.ただ,本記事を拝読する限りでは,同住民投票の結果の拘束の対象に関しては,「行政」機関に制限されているように解することもできる.果たして,本記事が報道されるように,法定に基づき,「行政」を拘束されることに留まるのか,または,議会という機関もまた拘束されることになるか,はたまたは,その拘束対象に関しても,住民投票制度を整備・実施する条例に基づき判断することが想定されているのか,同法案の詳細に関しては,公表後,要確認.
なお,蛇足.第174回通常国会に提出され,第176回国会(臨時会)でも「継続審査」*5とされた,前提出分の「地方自治法の一部を改正する法律案」については,本記事で紹介された地方自治法の改正案との関係は,どのようになるのだろうか.