政府は28日、地方自治法の抜本改正などを議論してもらうため、政権交代後休眠状態だった地方制度調査会(首相の諮問機関)を復活させる方針を固めた。これまで総務相が議長の「地方行財政検討会議」で同法改正論議を進めてきたが、全国知事会などの「手続き上問題がある」との指摘を受け、政権交代前の意思決定システムで仕切り直す。早ければ8月までに初会合を開く方針で、第30次の地制調となる。
 政権交代後、当時の原口一博総務相は、検討内容をより迅速に政策に反映させようと、地制調の代わりに自ら地方行財政検討会議を設置。自治法改正の検討を進め、片山善博総務相もこれを踏襲。今年1月、住民投票で反対が多数の場合、大規模公共施設の建設を中止できる制度の導入などを盛り込んだ改正案を打ち出した。しかし地方側には、改正案の中身だけでなく、地制調の答申を経ていないことへの反発も強く、国と地方との合意形成が難航していた。 
 地制調は1952年施行の設置法に基づく機関で、国会議員や首長代表、有識者ら30人以内の委員で構成。前回の第29次は2009年6月、「平成の大合併」の終了などを当時の麻生太郎首相に答申している。

本記事では,政府における地方制度調査会の開催方針を紹介.
2009年11月8日付同年12月15日付同年12月26日付2010年6月23日付の各本備忘録でも記したように,「日本国憲法の基本理念を十分に具現するように現行地方制度に全般的な検討を加えることを目的」*1として,法定上の設置が保障されつつも,審議の場としては未開のまま,残置されてきた地方制度調査会.地制調に関しては,2011年6月17日の総務相による閣議後記者会見にて「民主党政権になって地方制度調査会が開店休業になったことについては,当時,私も外から見ていまして,いささかいぶかしく思っていた者の1人」と述べられ,「今後,地方制度調査会というのは,やはり法律に基づいてできた機関でありますから,これの再立上げというものも考えてみたいと,今,考えているところ」*2との考えが示されていたところ.本記事を拝読させて頂くと,「8月までに初会合」が開催される方針にある模様.
その際,やはり気になるのが「地方行財政検討会議」との関係.上記の同日の同相の会見のなかでは「地方制度調査会というのは」「総理の諮問機関」であり「政府全体でこれは議論するという,そういう土俵」と位置付け,一方,「地方行財政検討会議」は「総務大臣が議長で,総務省で中心になってやるということ」として,両会が「併存しても,特段,大きな矛盾とか制約はない」*3との考え方が示されている.より具体的には,2011年6月24日の総務相による閣議後記者会見にて,「地方制度調査会が立ち上がることになれば,そこで改めて一からということではないと思いますけれども,これまで検討してきた案を地方制度調査会で検討してもらうというのも,一つの選択肢ではないかと,今,思っておりまして」*4とも言及されている.
いわゆる「「多極分散型」分権論議*5とならぬよう,地方行財政検討会議が「前捌き」機関の如く位置付けられ,一つの経路での議論がされるものと整理がなされている模様.その場合,「地方行財政検討会議→地方自治法の抜本見直し(平成22年)→地制調→答申→地方自治法改正案提出」という手順となるのか,はたまた,「地方行財政検討会議→地方自治法の抜本見直し(平成22年)→地制調→答申→地方行財政検討会議→地方自治法の抜本見直し(平成23年?)→地方自治法改正案提出」というように,地制調後,再度,地方行財政検討会議が開催され,「地方自治法の抜本見直し」をまとめられることになるのか,今一つ判然とはしない.
いずれの審議経路にせよ,2度にわたる「地方自治法の抜本見直し」*6を提示された地方行財政検討会議にて,「基本構造の選択肢のモデル」のように「各方面から幅広く意見を聴きながら検討していく」*7や「住民投票制度」のように「検討することとする」として,地方行財政検討会議では「地方自治法抜本改正についての考え方」の段階では「迂回」や「遅滞」*8的に記述された事案を中心に今般の地制調の場で審議されることになるのだろうか.地制調での審議事案は,要経過観察.

*1:総務省HP(組織案内審議会・委員会・会議等地方制度調査会概要)「地方制度調査会設置法」第1条及び第2条

*2:総務省HP(広報・報道大臣会見・発言等)「片山総務大臣閣議後記者会見の概要(平成23年6月17日)

*3:前掲注2・総務省(片山総務大臣閣議後記者会見の概要(平成23年6月17日))

*4:総務省HP(広報・報道大臣会見・発言等)「片山総務大臣閣議後記者会見の概要(平成23年6月24日)

*5:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)206頁

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

*6:総務省HP(政策地方行財政地方自治制度)「地方自治法の抜本見直し

*7:総務省HP(政策地方行財政地方自治制度地方自治法の抜本見直し)「地方自治法抜本改正についての考え方(平成22年)」(総務省平成23年1月26日)6頁

*8:大杉覚「行政改革と地方制度改革」西尾勝村松岐夫『講座行政学第2巻 制度と構造』(有斐閣,1994年)322〜323頁

制度と構造 (講座行政学)

制度と構造 (講座行政学)