まちをきれいにする条例(環境美化条例)を2006年に施行した伊勢崎市は、周辺環境に悪影響を及ぼしている土地の所有者・管理者に対し、市がごみ撤去などを命令しても従わない場合、市が行政代執行で撤去できる条例改正案をまとめた。悪臭やハエ・蚊などが発生する通称「ごみ屋敷」が同市でも問題化。強制力のある行政代執行を市が実施することで、条例の実効性を高めるのが狙い。12月定例会に改正案の提出を目指している。
 従来、周辺環境に悪影響を及ぼす土地について市はその所有者に是正の指導・勧告を行うことを規定。従わない場合、氏名などの公表ができるとしていた。ただ現在まで公表した例はないという。改正案では、「氏名の公表」を、強制力のある措置命令に変更。「不良状態の除去」を、期限を定めて命令することができる。従わない場合、市が「除去」を代執行し、掛かった費用は所有者・管理者に全額請求する。措置命令や代執行の妥当性を判断する機関として、有識者らで構成する環境美化審議会を新たに設置。審議会の答申に基づき、市長がこれらを実施する。管理が行き届かず良好な環境を保てない土地があり、その所有者・管理者から申し出があった時についても、市は草刈りやごみの撤去を代行、依頼者に費用を請求する仕組みを新たに整える。
 また、改正案では「吸い殻、空き缶、ごみのポイ捨て」「犬のふんの放置」「落書き行為」に対して最高3万円の過料を科すことも盛り込んでいる。同様の過料規定を盛り込んだ環境美化条例は館林、太田、安中、富岡の4市ですでに施行されている。伊勢崎市内では、民有地に大量のタイヤが野積みされ、失火により火災が数件発生。同市富塚町では今年2月、廃棄物処理法に基づき県が古タイヤなどの撤去を行政代執行した。市は29日まで、同条例改正案に関してパブリックコメントを実施している。

本記事では,伊勢崎市が制定された「伊勢崎市まちをきれいにする条例」の改正案のパブリックコメントの実施状況に関して紹介.同改正案に関しては,同市HPを参照*1
2006年4月に制定された同条例.「施行から5年が経過し」たものの,「犬のふんの放置や土地等の管理など」に関して「多くの苦情が寄せられている」*2ことが「基礎的な事実」*3とされての改正案.改正案では,「犬のふんの放置」「吸い殻,空き缶その他のごみのポイ捨て」等の「投棄行為」,「落書き」,「土地等の管理」に対して,現行の条例では「行政指導及び勧告まで」を「規定」していたもものの「措置命令の規定」されること,そして,「指導,勧告及び措置命令に従わない者」に対しては「罰則として、
過料」を「導入」*4される案として取りまとめられている.また,「土地等の管理」に関しては,「措置命令に従わず」また「一向に改善が図られず,その事案を放置した場合」であり,「周辺環境に悪影響が及ぶ場合」,「その状態の除去」を同「市が行うため行政代執行法」に「基づく規定を設け」*5ることが改正案とされている.
「ソフト戦略」重視から「ハード戦略」*6の整備とも整理ができそうな改正案.「ハード戦略」を通じて,「問答無用で片付けてしま」う執行スタイルを採用されることになるのか,はたまた,これらの規定もまた「柔らかく運用しながら」「解決する努力」*7がなされることになるか,同条例案制定後の執行状況もまた,要観察.

*1:伊勢崎市HP(市役所の体系(課名で探す)環境部環境保全課伊勢崎市まちをきれいにする条例の一部改正に関するご意見を募集しています(パブリックコメント手続))「伊勢崎市まちをきれいにする条例改正(案)について」(伊勢崎市 環境部 環境保全課)

*2:前掲注1・伊勢崎市(伊勢崎市まちをきれいにする条例改正(案)について)1頁

*3:白石賢「政策決定とインセンティブ首都大学東京都市教養学部都市政策コース編, 和田清美監修『逆発想の都市政策』(ぎょうせい,2011年)250頁

逆発想の都市政策

逆発想の都市政策

*4:前掲注1・伊勢崎市(伊勢崎市まちをきれいにする条例改正(案)について)2頁

*5:前掲注1・伊勢崎市(伊勢崎市まちをきれいにする条例改正(案)について)2頁

*6:前掲注3・所収(松井望「政策の決定と実施」146頁)

*7:肥沼位昌著・出石稔監修『あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら』(第一法規,2009年)130頁

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)