高崎市教育委員会が二〇一〇年度に発注した公共事業で、地方自治法と市の規則で競争入札を定めているにもかかわらず、十件、計約二千万円を随意契約していた実態が、一一年度の市包括外部監査報告書で分かった。報告書は「同じ業務ができる業者は複数あり、競争原理を排除する理由はない」と指摘。大半は長年同じ業者に発注し、入札をしていれば契約価格を抑えられたとみられる。 (菅原洋)
 同法と市の規則はほぼ同文で、一連の発注は一件につき五十万円を超える場合、競争入札を定めている。しかし、高崎市教委は高崎地区の小中学校十校にある浄化槽維持管理業務を計約六百十万円で随意契約。同じ業務を群馬地区の五校は計約三百六十万円、榛名地区の六校は計約三百七十万円でともに随意契約した。この他、浄化槽の業務で百万円を超える随意契約は二件あり、五十万円を超える随意契約の合計は十件、計約二千万円に達した。小中学校の浄化槽業務は最低五年間は同じ業者と契約し、大半は浄化槽の設置時から数十年間続けてきたという。
 ただ、同法と市の規則には、例外規定として「(契約の)性質や目的が競争入札に適しないもの」との項目がある。市教委はこの項目を適用し、浄化槽業務について、随意契約の理由書に「業者は設備の詳細を熟知し、瑕疵(かし)もない」と各契約で長年同じ記載をしてきた。しかし、報告書はその理由を退け、他の例外規定についても「特殊なもので本件の場合は該当しない」と指摘している。小中学校の浄化槽業務を担当する市教委の教育総務課は「一部地区はこの業務ができる業者が一社しかない。ただ、高崎地区などには複数あり、今後は報告書の指摘を重く受け止めて対応したい」と語った。市契約課は「庁内の発注関連書類に目を通しているが、今後はチェックをもっと適正にしたい」と話している。

本記事では,高崎市における包括外部監査報告書の内容を紹介.本記事で紹介されている,同市の随意契約に対する意見は,同報告書参照*1
同報告書では,本記事でも紹介されている同市の「高崎市契約規則」*2を参照されてつつ,随意契約は,同規則の「第1項では別表に定める額を超えない場合」として「委託契約では50 万円を超えないものとしている」こと,同規則の「第2項から第9項まで契約の内容」に関する規定からは,「第5項緊急の必要により競争入札に付することができないとき」や「第6項競争入札に付することが不利と認められるとき」,また「第7項時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」が「一般的」に随意契約とする理由であるとしつつも,同報告書では,「随意契約としている理由」は「概ね過去の実績といった事柄を挙げている」ものの,同「市に上記の業務を実施できる業者は複数あ」るとして「競争原理を排除する理由はない」*3との意見が示されている.なるほど.
下名の観察対象の一つ,「自治体行政内規」*4の手続と運用の観点からも考えさせられる課題.価格による限定列挙的な規定とともに,概括例示的な規定の併設的な規定に基づき随意契約とするか否かという判断が「管理者に管理をさせる」,いわば「行政ムラ(administrative village)」*5内の手続上の課題とも整理ができなくもなさそうか.考えてみたい.

*1:高崎市HP(担当部署一覧監査委員事務局包括外部監査)「平成23年度(2011年度)高崎市包括外部監査報告書 公有財産の管理に関する事務の執行について」(平成24年3月21日)97〜98頁

*2:高崎市HP(高崎市例規集)「高崎市契約規則」(昭和39年4月1日,規則第16号)

*3:前掲注1・高崎市([平成23年度(2011年度)高崎市包括外部監査報告書 公有財産の管理に関する事務の執行について)98頁

*4:兼子仁『変革期の地方自治法』(岩波書店,2012年)90頁

変革期の地方自治法 (岩波新書)

変革期の地方自治法 (岩波新書)

*5:Toonen,Theo A.(2006)‘The comparative dimension of administrative reform' Guy Peters, Jon Pierre eds.Politicians, Bureaucrats and Administrative Reform,Routledge 197

Politicians, Bureaucrats and Administrative Reform (Routledge/ECPR Studies in European Political Science)

Politicians, Bureaucrats and Administrative Reform (Routledge/ECPR Studies in European Political Science)