塩尻市は一日、行政評価を委託するとして、地方自治法が規定する非常勤職の専門委員に元市総務部長の中野達郎氏(61)を選任した。市はこれとは別に、行政評価を充実させることなどを理由に、市監査委員の常勤化を可能にする条例改正案を三月市議会に提出。慎重姿勢の議会が継続審査としているさなかの専門委員選任は、新たな議論を呼びそうだ。
 小口利幸市長は取材に「直ちに常勤監査委員を置くことができない代わりの次善の策。行政評価は第三者評価が良いと言われるが、中身が分からない人では意味がない。(市職員OBの起用は)適材適所だ」と述べた。市企画課によると、市は本年度、四百五十余の事務事業の内部評価を始めた。専門委員は各事業の改廃を含め改善点の指摘、提言をする。「評価を新年度予算編成に反映させるため、この時期の選任になった」と説明している。
 これに対し議会側からは「専門委員の人件費に補正予算が必要なはず。監査委員常勤化の結論も出ておらず、ばたばたした感が否めない。議会との関係も損ねかねない」との声もある。専門委員は地方公共団体の長の委託で調査、研究ができると規定。任期は一年以内で、再任を妨げない。塩尻市は昨年七月、行政改革などの専門委員を民間から選任しており、今回で二人目となる。中野氏は二〇一〇年度末で定年退職。再任用制度で一一年度末まで総務部長を務めた。(福沢幸光)

本記事では,塩尻市における専門委員設置の取組を紹介.同取組に関しては,現在のところ,同市HPでは確認できず,残念.公表後,要確認.
塩尻市専門委員設置要綱」に基づき,「任期は,1年以内」(同要綱第5条)で,「職務を遂行するため」に「市長の事務を分掌する部課等の長に対し」「必要な資料を提出させ.又は説明を求めることができる」(同要綱第4条)権限をもつ同職.同要綱第2条第1項からは,同職の「所掌事項」は,「教育文化に関すること」「福祉に関すること」「環境に関すること」「産業に関すること」「協働のまちづくりに関すること」の5種類であるからすると,本記事にて紹介されている「行政評価」は,その所掌事項のいずれにも該当しないようではある.ただし,同要綱同条第2項では,以上の5つの事項に加えて,「市長が特に必要と認める場合は」同「事項以外の事項を委託することができるものとする」*1とも規定されており,行政評価を所掌とする同職はこちらに該当される模様.
実際の職務に関しては,本記事内でも紹介されてはいるものの,2012年8月1日付の読売新聞では若干詳細に紹介.同記事を拝読させて頂くと,「11年度一般会計の計約450事業」に関して「聞き取り調査などをしながら単独で評価」を行い,2012年「11月をめどに改善点を市に提言」.その後同「市は提言内容を検討」後「13年度の予算編成に反映」*2する予定,という.
また,同記事には,同職就任者の経歴も紹介されており,同市の「財政課長,企画課長などを経て2008年10月から総務部長」に就任.その後,2011「年3月末の定年後も市が1年間,同部長として再任用」し,2012「年3月末に退職」*3という経歴である,という.その所掌事項が行政評価ということもあり,同職の職歴に起因する「捕虜capture」と「地域主義localism」に陥らず,任命権者である市長への「組織的統合organizational cohesion」*4を持ちつつ,とはいえ市長からもまた独立する確保したうえで,「身内に甘くなる傾向」や「悪意でなくとも,意図的に改竄が行われる可能性」*5からは屹然とした距離を保った評価行動を採用されることが期待されそう.実際の評価結果も要観察.

*1:塩尻市HP(例規集)「塩尻市専門委員設置要綱」(平成23年5月20日,告示第39号)

*2:読売新聞(2012年8月1日付)「塩尻市専門委員に前総務部長

*3:前掲注2・読売新聞

*4:Gormley,William T. , Steven J. Balla.2012.Bureaucracy and Democracy,SAGE:58-59

Bureaucracy and Democracy

Bureaucracy and Democracy

*5:熊坂伸子『NPMと政策評価』(ぎょうせい,2006年)17頁

NPMと政策評価―市町村の現場から考える

NPMと政策評価―市町村の現場から考える