北陸新幹線金沢開業を2年後に控え、金沢市は来年度、歴史都市にふさわしい魅力的な 夜間景観の創出に向けて、従来の照明規制に加え、ライトアップなどの積極的な活用に乗 り出す。全国初の夜間景観形成条例の制定から7年。2月には専門家を交えた市民会議で条例の効果を検証し、新たな都市照明計画を策定する。風格ある「百万石の夜景」を積極的に発信し、世界的評価の確立を目指す。
 金沢市は2011年に都市照明の世界的表彰「第9回シティ・ピープル・ライト賞」で 第3位となった。受賞は国内初で、アジアでも杭州(中国)ソウル(韓国)に次ぐ。夜間景観形成条例できめ細かく照明環境形成区域を定め、照明の形態や色彩を規制することで 美しい夜間景観をつくってきたことが評価された。
 これを受け、市は今年度、金沢の歴史と文化をより魅力的に演出する照明計画への発展を模索。山野之義市長は8月に姉妹都市のベルギー・ゲント市、仏ナンシー市を訪問し、 歴史的な街並み全体をライトアップする先進的な取り組みや、世界遺産の宮殿跡に映像を投影する新技術「プロジェクションマッピング」を視察した。いずれの取り組みも、市民のまちへの誇りを醸成し、夜のにぎわい創出につながっていた。
 市民会議では、金沢21世紀美術館の設計者で2010年に「建築界のノーベル賞」と呼ばれるプリツカー賞を受賞した建築家の妹島(せじま)和世さんが金沢の夜間景観について基調講演する。金沢都市美文化賞の実行委員会との共同開催とし、山野市長らがパネ ル討論する。市が養成してきた市民による景観サポーターが取り組みを発表し、初実施の 市民意識調査の結果を報告する。新幹線開業で北陸は首都圏の日帰り圏内に入る。宿泊者減少などのストロー現象を防ぐため、金沢市は夜間滞在型のまちづくりを探っている。市は夜間景観の魅力向上を柱の一つに据え「歴史都市という大きな傘の中で、世界のどの都市にもない夜景を目指す」(景観政策課)と強調。従来より踏み込んだ屋外照明に関する誘導施策や、文化施設のライト アップ、プロジェクションマッピングの導入などを総合的に検討していく。

本記事では,金沢市における夜間景観形成条例の取組を紹介.同条例に関しては,同市HPを参照*1
2005年に制定された同条例(「金沢市における夜間景観の形成に関する条例」)では,二つの区域を置いている点が特徴的.まずは,「地域の特性に配慮した適切な照明によって,安全で快適な環境を保全し,又は創出」(第2条第1項第2号)を目的とする「照明環境形成地域」(第6条)を定め,「照明環境形成地域ごとに,照明環境の形成を図るための基準」として「照明環境形成基準」(第7条)を置く.一方で,「照明環境の形成を図りつつ,個性豊かで魅力的な夜間における景観を保全し,又は創出」(第2条第1項第1号)を目的とする「夜間景観の形成のために必要な区域」として「夜間景観形成区域」(第14条)を定め,「夜間景観形成区域ごとにおける夜間景観の形成を図るための基準として,夜間景観形成基準」(第15条)を置いている.
証明環境形成地区では,「市街化区域内において,その面積が3,000平方メートル以上の土地に係る開発事業に伴う屋外照明設備の設置又は改良」,「市街化区域以外の区域内において,その面積が1,500平方メートル以上の土地に係る開発事業に伴う屋外照明設備の設置等」,「市街化区域内において,その床面積の合計が1,000平方メートル以上の集客施設の建築等に伴う屋外照明設備の設置等」,「自動車の駐車の用に供する部分の面積が500平方メートル以上の路外駐車場」の「設置に伴う屋外照明設備の設置等」,「サーチライト,レーザーその他の投光器で広域にわたり照明環境の形成に影響を及ぼすおそれのあるもの又は光源の面積の合計が10平方メートルを超える屋外照明設備の設置等」を行う場合に「当該行為の実施に係る計画について市長と協議」(第8条)が必要となる.
一方で,夜間景観形成区域では,協議までは求められていない.具体的には,「建築物その他の工作物の新築,増築,改築若しくは移転,外観を変更することとなる修繕又は模様替に伴う屋外照明設備の設置等」,「宅地の造成,土地の開墾その他の土地の形質の変更に伴う屋外照明設備の設置等」の場合に「あらかじめその内容を市長に届け出」ことになる.
 夜景という「資源の希少性」への「過剰利用」を「抑制」*2となる同条例.本記事を拝読させて頂くと,2013年2月には「市民会議で条例の効果を検証し,新たな都市照明計画を策定」を開始される予定とのこと.光と闇との調和を図りながらの,夜景の残し方の議論は,要経過観察.

*1:金沢市HP(住まい・交通・まちづくり金沢の景観夜間景観の形成)「金沢市における夜間景観の形成に関する条例」(平成17年9月22日,条例第58号)

*2:高村学人『コモンズからの都市再生』(ミネルヴァ書房,2012年)13頁

コモンズからの都市再生―地域共同管理と法の新たな役割

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