官公庁の敷地内禁煙が進まない。兵庫県によると、県内では4月1日現在、市町別で全庁舎の敷地内禁煙を達成したのは神戸市だけで、県も実施できていない。昨年4月に県が施行した受動喫煙防止条例では官公庁は建物内の禁煙にとどまり、建物の外までは義務付けていないことが背景にある。職員や来庁者が中庭、駐車場などで喫煙する姿が見られ、専門家は「健康を守るためには建物内禁煙だけでは不十分だ」と改善を訴える。(金井恒幸)
 同条例は、都道府県では神奈川県に次いで全国で2番目に施行された。神奈川は公共的な施設の喫煙室設置を認めているが、兵庫は官公庁の建物内での喫煙室設置は認めない一方、建物の外では喫煙を規制していない。県内の小中高校には条例で敷地内禁煙を求め、100%達成しているという。
県庁舎はゼロ
 県の調査では敷地内禁煙の実施は、県内の国の庁舎152カ所のうち法務局の一部の支局や出張所計4カ所。87カ所の県庁舎ではゼロで、市町庁舎でも313カ所のうち計70カ所にとどまる。神戸市は、県の条例対象となる庁舎42カ所の全てで敷地内禁煙を実施。2011年の世界禁煙デーに当たる5月31日に始めた。同市の担当者は「本庁舎では敷地内の通路が路上喫煙禁止地区に指定されていることもあり、建物外でも喫煙しにくい環境がある」と指摘する。その他の市町で敷地内禁煙を実施しているのは、保健所や保健センター、一部庁舎などの計28カ所。全国的にも大阪府内の一部自治体などで行われている程度という。県の担当者は、官公庁で敷地内禁煙が進まない理由として、喫煙する来庁者や職員、議員らの同意が得られにくいことを挙げる。

周囲の苦情も
 さらに敷地内を禁煙にすると、敷地の外に出て喫煙する人もいるため、周辺の住民らから苦情が寄せられるケースもある。実際、東京都内の一部自治体では、いったん敷地内禁煙にしたものの、喫煙所の設置を求める陳情を議会が採択した例があるという。県の担当者は「受動喫煙防止という観点に絞ると、官公庁では敷地内禁煙が一番良いとまでは言い切れない」とし、「現時点では、県として敷地内禁煙を目指したり、条例変更を検討したりする考えはない」と話す。
 一方、禁煙運動を進める医師らで作るNPO法人日本タバコフリー学会」(大阪府豊中市)は5月、県内の税務署8カ所が計約850万円をかけて庁舎外にプレハブなどの喫煙室を設けていることに対し、撤去を要望する文書を送った。県は「この喫煙室は庁舎外なので条例の規定はクリアしている」とするが、「非喫煙者と喫煙者、住民と職員ら全ての人の健康を守るためにも、敷地内を含めた全面的な禁煙が重要だ」と同学会事務局長の薗はじめ医師。「官公庁は税金が使われている公的な存在なのだから、建物内禁煙だけでは不十分ではないか」と強調する。

本記事では,兵庫県における受動喫煙防止条例の実施状況を紹介.
2012年3月21日付の本備忘録ではその制定を記録した,同県による「受動喫煙の防止等に関する条例」*1.同条例では,「規制,資金,能力構築,教育,調査・情報」によるタバコ政策の「手法」*2のうち,官公庁では「建物内の禁煙」*3への規制手法を採用する.そのため,同条例による規定上は「敷地内」での喫煙は,適正となる.
本記事によると,「敷地内禁煙の実施」は「県内の国の庁舎152カ所のうち法務局の一部の支局や出張所計4カ所」「87カ所の県庁舎ではゼロ」,「市町庁舎」では「313カ所のうち計70カ所」と自主規制の取組も窺える模様.建物内と敷地内での規制状況は,要観察.

*1:兵庫県HP(暮らし・環境健康・福祉健康づくり)「受動喫煙の防止等に関する条例について

*2:Cairney,Paul,Donley T. Studlar, and Hadii M. Mamudu(2012)Global Tobacco Control Power, Policy, Governance and Transfer,Palgrave Macmillan,p.14.

Global Tobacco Control: Power, Policy, Governance and Transfer

Global Tobacco Control: Power, Policy, Governance and Transfer

*3:兵庫県HP(暮らし・環境健康・福祉健康づくり受動喫煙の防止等に関する条例について)「受動喫煙の防止等に関する条例に基づく施設管理者のための手引」1頁