県は十一日、平成二十年版県政報告書を公表した。県のホームページに掲載するとともに、県庁や各県民センターなどで配布する。
県が昨年度に取り組んだ事業とその成果を報告し、県民と情報共有をはかり、県政への意見を集める。報告書は、一章が昨年度の県政運営と本年度の展開を総括。二章は、重点的な取り組み結果の一覧と評価内容を記載。三章では施策別の昨年度の取り組み結果一覧と各施策の評価内容を掲載している。一章は、県の経済が平成十六、十七年度の実質経済成長率が二年連続して全国一位になるなど、好調に推移しているものの、経済成長を持続するには知識集約型産業構造への転換が必要と説明、三月に四日市市に「高度部材イノベーションセンター」を開設したことなどを報告した。本年度は地域格差の解消を目指し、底上げが必要と分析している。二章は、「みえの元気づくり」「くらしづくり」「絆(きずな)づくり」の三つの重点的な取り組み別に進展度を四段階で評価。「元気づくり」では、六項目のうち産業集積の形成など二項目が「進んだ(A)」、女性や高齢者の支援など四項目が「ある程度進んだ(B)」という評価だった。「くらしづくり」は十一項目のうちAが二、Bが八、介護基盤の整備の一項目が「あまり進まなかった(C)」の評価だった。「絆づくり」は四項目のうち、Aが一、Bが三だった。野呂昭彦知事は「県民が主役の県政を実現するためには、県民の皆さんの意見やニーズを県政運営に的確に反映させることが必要。報告書を県の政策の現状をご理解いただく資料として活用いただき、『県民しあわせプラン』の実現に向けて、広く意見を聞かせていただきたい」としている。配布は、県庁一階受付、県栄町庁舎一階情報公開・個人情報総合窓口、県民センター九カ所で。取りに行けない場合は送付する。問い合わせは県予算調整室=電話059(224)2119=へ。

同記事では,三重県において,昨年度一年間の事業の成果と評価を取りまとめた「県政報告書」を作成し,配布・配布を開始し始めたことを紹介.県政報告書については,同県HPを参照*1.同報告書の発刊は,本年度で5回目.その趣旨は,最初の報告書である2004年度版から見てみると*2,「この報告書を県議会に対して報告・説明するとともに広く県民の皆さんに公表し、県政に関する情報共有と積極的な県政参画をはかるツールとして活用」として,主に総合計画(「県民しあわせプラン」),戦略計画(「中期実施計画」),県政運営方針の進捗状況を掲載している.
しばし,総合計画等への問題として「総花的」*3であることが指摘される.ただ,個人的には,「総花的」であること自体には問題は少ないと思う.無理から優先順位を明記した内容も,時代が過ぎればその優先順位が異なってくることの方が一般的と思う.むしろ,計画内各記載事項の一文一文に,「コロイド」的に「事業粒子」が溶け込んでいることが難点ではないだろうか.つまり,住民(更には外部の人々,そして,何よりも,自治体内部)にとっては,記載濃度が高すぎるため,計画が目的とする事柄が見えないことが難点ではないかと思う.更に,時代変化に応じた改定として進行管理を行えば行うほど,記載濃度が高い計画に対する進行管理は内部完結的になりがちでもあり,更にその計画濃度が高まっていく.その結果,計画内容を十分に理解できることは,むしろ稀にもなる.
同県のように,単に,行政評価結果の公開としてではなく,報告書というパッケージにとして「結晶化」し,その「浸透」度合いを「透明化」する取り組みは興味深い.総合計画につきまとう「成果が見えない」*4という指摘もまた,これにより改善される.他の自治体では,どの程度採用されているのだろうか.少し調べてみなければ.
ただ,HP上に掲載された報告書は,個別ファイルを細分化し掲載しているため,一括して拝見させて頂くには,少し面倒.利便性からは,結晶化されている版もまた掲載されていることが望ましいとも思う.

*1:三重県HP「県政報告書

*2:三重県HP「県政運営における年次県政報告書の位置づけ」『2004年(平成16年)版県政報告書〔平成16年7月〕』

*3:例えば,三重県を考察対象とした書籍としては,次のものがある.上山信一・伊関友伸『自治体再生戦略』(日本評論社,2003年)39頁

自治体再生戦略―行政評価と経営改革

自治体再生戦略―行政評価と経営改革

*4:吉村裕之『三重県の行政システムはどう変化したか』(和泉書院,2006年)152頁