東京都は、国の基準を緩和し企業の参入を促している独自の認証保育所制度について、新年度から認証手続きを厳格にし、開設後の監視体制も強化する方針を決めた。
 要綱などを見直し、事業者の開設申請前に財務状況を確認するほか、職員を水増ししないよう雇用状況も厳しく審査する。都の認証保育所制度は、認可保育所に入れない待機児童を減らそうと2001年に創設。約430か所に増え、規制緩和のモデルケースとして注目された。しかし、昨年、中野区の認証保育所が経営難で突然閉鎖したのをはじめ、職員数の虚偽申請などで都が補助金返還を請求する不祥事が3件に上った。
 このため都は、これまで最終的な認証の段階で提出させていた過去3年間の決算書などを、事業者が地元の市区町村と事前協議を行う早期の段階で出すよう求める。職員を水増しする虚偽申請防止策としては、雇用契約書などの提出を義務付ける。保育所開設後は3か月以内に立ち入り指導に入り、申請通り職員を配置しているかなどを早期に確認する。これまでは、開設してから1年半後に初めて実地調査が入ることも多かった。立ち入りには保育士と栄養士が新たに加わり、専門職の視点から点検する。昨年都議会で一部の認証保育所で食材費が極端に安いという指摘があり、立ち入りの際は給食の内容のチェックも強化する。

同記事では,東京都において実施している認証保育所制度の認証手続を厳格化し,開設後の監督体制を強化する方針であることを紹介.2001年度から実施してきた東京都の認証保育所制度.
同制度の内容については,同都HPを参照*1.下名個人的にも,来年度保育所制度に関して考えてみよう,とも考えているため,同制度をまずは簡単に整理.同制度は,「東京都認証保育所事業実施要綱」*2に基づき,設置主体が民間事業者等であり,「月160時間以上の利用が必要な0歳から小学校就学前までの都内在住の児童」を補助対象とした「認証保育所A型」と,個人が設置主体となり「区市町村が必要と認める0歳から2歳までの都内在住の児童」を補助対象とする「認証保育所B型」があり,現在までにA型は347件,B型が87件と計434件*3認証保育所がある.指導監督としては,「知事は,設置者に対して,施設の運営状況等必要な事項について,年1回以上,文書により,回答期限を付して報告を求める」(事業実施要綱15)とこととされているとともに,「毎年度1回以上」「立入調査」(事業実施要綱16)の実施が定められている.
同記事では,現行制度を踏まえつつ,決算書の早期提出化,雇用契約書提出の義務化,開設後3か月以内での立入調査の実施を行うことで,質的保持を図ることを企図されている模様.質確保のためには,規制及び手続の厳格化は一つの路線.2009年2月9日付同年2月11日付同年2月25日付及び同年3月27日付の各本備忘録でも触れた「認証制度の叢生」のなかで(この課題も,実は下名個人的にはまとめて見たいものの一つ),規制者と被規制者,認証者と申請者間での「情報の非対称性」において,前者によるリスク回避のためにも,認証制度が元来有する「一定の能力を有している否かを判定し,有している者には全て資格を与える」という「資格試験型」的な制度から,同制度の実施状況を踏まつつ,「多数の申請者の中の特定の者だけ資格を付与する」という「採用試験型」*4的な運用へと転化せざるを得ないのだろうか,とも考えられる.規制がもつ,その形態の指向性の一つとして,同判断は興味深い事例.

*1:東京都HP(福祉保健局子ども家庭保育サービス)「認証保育所について

*2:東京都HP(福祉保健局子ども家庭保育サービス認証保育所について)「東京都認証保育所事業実施要綱」(平成13年5月7日12福子推第1157号)

*3:東京都HP(福祉保健局子ども家庭保育サービス認証保育所について)「東京都認証保育所一覧(A型・B型)

*4:森田朗『許認可行政と官僚制』(岩波書店,1988年)95頁

許認可行政と官僚制

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