吉田利宏先生よりご恵与賜りました.誠にありがとうございました.
自治体の現場とルールとの間での試行錯誤をされているルール執行の実態や,執行に伴う深刻な現場の課題を,著者のお二人の軽妙な語り口を通じて,楽しく学ばせて頂きました.本書では,冒頭に自治体の法運用の実践を「炭坑のカナリヤ」(10頁)と述べられています.「炭鉱のカナリヤ」とは,やや自虐的すぎるのではないだろうかと思いつつ拝読させて頂くと,広島市暴走族追放条例事件でのいわゆる「稚拙」意見への本書の次の言及に触れ,なるほどと思いました.自治体の法技術の未整備をただ嘆くのではなく,限られた環境のなかでの自治体職員としてあらゆる試みようとする現場に立つ者の矜持が「炭坑のカナリヤ」という言葉に集約されているように拝察いたしました.

憂うべきは自治体の立法技術それ自体よりも,拙いとまで指摘がありながら,住民のために困難に対処せざるを得ない自治体の現状にあるのではないでしょうか」(194〜195頁)

心より御礼を申し上げます.誠にありがとうございました.