甲州市は、住民意見を反映させるため合併前の旧3市町村ごとに設置した地域自治区を今年度限りで廃止する方針を固めた。同市は「小さい市なので、なくしても住民の意見を反映させることが出来る」としている。地域自治区平成の大合併で合併推進に活用され、総務省によると、2006年7月時点で25道県の53市町が導入し、県内では同市だけ。その中では最も早い廃止となる。
 甲州市では、合併協議の過程で住民から「地域の独自性が失われる」などと合併をためらう声が上がったため、05年11月の合併時に県内で初めて地域自治区が設置された。甲州市では、地域自治区に設けられる地域協議会の委員は旧塩山市、旧勝沼町、旧大和村の3地域で計49人。有識者や地区の代表、一般公募などで構成され、市長が選任する。07年度は各地域で4〜5回開かれ、委員1回あたりの報酬は2500円で、年間50万円程度の支出となる。
 しかし、地域協議会での意見交換は「低調」との指摘があった。市は、委員の任期が今年度末で終わることから、今年2月下旬、3協議会の全委員に、存廃についてアンケートを実施したところ、半数以上が廃止を支持したため決めた。地域自治区を廃止後も、窓口業務などの行政サービスに変更はないという。田辺篤市長は「地域協議会がなくなっても、地元の集会の頻度を増やすなどして住民の意見を行政に反映させていく」と話している。
 総務省は「住民によりよいサービスをと考える際に、(地域自治区を廃止するという)判断もあり得るのではないか」と話している。全国では、岩手県一関市が設置期限を決めていたため今年度末で終わる。浜松市は現在の地域協議会の委員任期が切れる2009年度末で廃止する予定だ。

同記事では、甲州市における「地域自治区(一般制度)」を2007年度末をもって廃止することを紹介。浜松市に次いで2つ目の廃止情報。
地域自治区(一般制度)」は、豊田市先日も紹介した宮崎市を除けば、ほぼ旧合併前市町村区域への設置が一般的。制度選択上、「地域自治区(合併特例)」を選ばないことで、普遍化を指向する傾向があるようだが、まだ定着には至らないよう。
一方で、上越市のように、合併前の区域を更に分化し、「地域自治区(一般制度)」を導入する取り組みもある*1。「地域自治区(一般制度)」の趣旨から考えれば、上越市のように、より狭域の区域での展開の可能性を探れるかと思うものの、現在の自治体の財政状況からすれば、同制度にかかるコストはやや重すぎるということか。
国の出先機関再編論議と同様に、特定の「行政区域」やそこにおかれる行政機構は絶対ではあるまい。区割りというシステムもまた、それがあることを意識しつつも絶対視することもなく、常に可変性を含みつつあること*2が実際のところであれば、廃止や未設置も一つの意思。その一方で設置もまた一つの意思。制度論的には全市町村区域への設置が前提とされるが、これもまた区域毎での設置を可能とするよう地方自治法上の規程を改めて考えても良い*3かとも思う。

*1:上越市HP(合併前の上越市の区域への地域自治区設置に向けた取組)「合併前の上越市の区域への地域自治についての市民説明会資料(改訂版)

*2:杉田敦『境界線の政治学』(岩波書店、2005年)24頁

境界線の政治学

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*3:松本英昭「地方公共団体に係る制度の改革に関する若干の考察」『地方自治』2008年1月号第722号、45頁