福岡市は、単年度の予算案が市議会で議決される前に、予算関連資料をホームページ(HP)で公開するための検討を始める。予算編成過程の透明性を高め、市民に分かりやすい行政運営をすることが狙い。09年度の一般会計当初予算から実施する方針で、公表のスケジュールや方法については、市財政局が今後、庁内で検討する。
 市財政局の菅原泰治局長が、市議会で方針を表明。「予算編成過程を公表することにより、透明性が高まると期待している」と述べた。市財政調整課によると、全国17の政令指定都市の中で、編成過程をHPで公表しているのは8市。このうち札幌、大阪、神戸、北九州の4市は、市議会の議決前にHPなどで公開しており、議会の議論と並行して、市民も予算内容を知ることができる。一方、福岡市は現在、予算案の議決後にHPへの掲載準備を始めるため、掲載は4月以降になっている。石橋正信課長は「市民の関心も高まり、情報公開の制度も進んだ。極力早く市民へ情報が届くようにしたい」と話し、議決前の公開を視野に庁内で検討するという。予算書類の公開では、先進県とされる鳥取県が事業採否の理由も含め、関連書類すべてをHPで公開している。しかし、福岡市の場合、書類はA4判で3千枚に上る。かえって市民に分かりにくくなるとの懸念もあり、現状通り主要事業など一部のみ公開が有力だ。HPでの公開は、吉田宏市長が選挙公約として「徹底して財政情報を開示し、費用対効果の見込めない大規模開発などを市民と一緒に総点検して厳しく見直す」と訴えていた。市長は朝日新聞の取材に「市民に分かりやすい方法で公開できるよう、きちんと検討したい」と語った。

同記事では,福岡市で「予算編成過程」で作成される「関連資料」を,議会議決前に公開することをを検討する方針であることを紹介.
同記事にも紹介されている各政令指定都市の公開状況を見ると*1,概ね各事業部門からの予算要求調書,査定調書,復活調書,首長査定調書等が公開されている.ただ,いずれも膨大である.そのため,限られた「コントロールフリーク」*2か専門家でもなければ,全てを把握することはないだろう.そのため,主要事業等に特定化することも一案とはいえる.ただ,その場合も,例えば,市民公募等の委員会等を設けて,公開対象事業を選定する取り組みがあっても良いのかも知れない.
また,予算編成過程(査定過程)とは,「事業部局とともに,住民が真に求めているものは何か,有益な事業を最も効率的に実施する方法はどうかといったことを,ともに考えることである」*3との指摘もある.ポイントは財政担当者と事業担当者が「ともに考える」ということである.つまりは,予算編成過程とは,自治体職員における構築主義的な現象であるともいえる.そのため,語義通りの「過程」を理解する場合,事業部門内での検討過程,財政部門によるヒアリング過程,首長によるヒアリング過程で,何が発言され,何故そのような結論となったかという情報(発言内容)の把握も又重要といえる.ただ,これらの発言内容の公開となると,政治的な影響のみならず,ただならぬ労力もあるが.

*1:札幌市HP「平成20年度予算の編成過程」,大阪市HP「平成20年度:予算の編成過程等」,北九州市HP「平成20年度予算編成過程の公開について

*2:金井利之・今井照「市民自治のこれまで・これから第8回 地域間格差自治体の政治力」『地方自治職員研修』第40巻No.11,564号,2007年11月,20頁

地方自治職員研修 2007年 11月号 [雑誌]

地方自治職員研修 2007年 11月号 [雑誌]

*3:松本英昭『地方公共団体の予算』(ぎょうせい,1979年)404頁