京都市門川大作市長は6日の市議会代表質問で、住民の自治会離れを防ぐ目的で、「自治会等加入促進条例」(仮称)を制定する意向を明らかにした。全国的に自治会加入率の低下が指摘される中、金沢市が4月にも同様の条例を全国で初めて施行する予定。門川市長は市議の提案に答える形で、「地域力を高めるため大変意義がある」と述べた。
 質問に立った自民党の寺田一博市議が、京都市内の自治会で若者やサラリーマン世帯の加入が減少していると指摘し、「行政が自治会参加のルール作りに取り組むことで地域参加の橋渡しをすべきだ」と条例制定を求めた。これに対し、門川市長は「条例は大きな意義がある。今後、市民的論議を深めながら、制定について検討を進める」と答えた。金沢市は3月市議会にマンション住民と地域住民のつながりを強めるため、「集合住宅コミュニティ条例」を提案。集合住宅を対象に、自治会などをつくるための相談窓口設置や各種支援制度創設、建設業者によるコミュニティー担当者配置などの内容で、4月施行を目指している。京都市でも、分譲マンションや一戸建て住宅の販売業者などが、購入者に対し自治会の結成や参加を促したり、町内会費や役員などの情報提供を行う仕組みをつくることが考えられるという。市によると、市内の自治会は約6300団体あるが、自治会離れが徐々に進んでいる。

同記事では、京都市で,自治会への加入促進を目的とした条例制定予定であることを紹介。日本都市センターが2003年に実施した「近隣自治に関するアンケート調査」(回収率68.6%)では,政令指定都市では,地縁型住民自治組織と協議会型の住民自治組織,そしてテーマ型市民活動組織の3種類の組み合わせによりコミュニティ活動を担う割合が比較的高い*1京都市のその地域からすれば,当該類型に合致しないことも想定されるが,まずは,これらの組織の組み合わせ一つである地縁型住民自治組織に対して,その加入率の支援を重点化する模様.
一般的な理念や意義,そして期待もよく分かる.また,そもそも「協働関係は,指令関係・客体関係との間で,適切な緊張とバランスと相互分担のなかに位置づけられなくてはならない」*2という論点も考えなければならいことも確か.問題は具体的な方法であろう.そこで,同記事でも紹介されている金沢市の「集合住宅コミュニティ条例(案)」を検討してきた「集合住宅のコミュニティ組織形成検討懇話会」のホームページを見てみると,具体的な措置としては,次のようなことが記載されている*3

3.コミュニティ組織の形成及び活動の促進に対する支援
・コミュニティ組織形成のきっかけづくりや助言等を行う相談窓口の設置:NPOなど市民活動団体の専門性を活かし、町会連合会や町会、これからコミュニティを形成しようとする集合住宅等の住民に対し、コミュニティ組織形成のきっかけづくりや助言、相談を行う。
・集合住宅におけるコミュニティ組織形成にかかる支援制度の創設:町会設立にかかる準備段階から活動が軌道にのるまでに要するコミュニティ事業費への支援
・「コミュニティセンター整備費補助」「コミュニティ活動推進用具購入費等の補助」の拡充
・町会連合会における地域コミュニティの活性化を推進するリーダー的人材や団体の育成

資金,権限,人材,情報という資源支援方策の内でも,情報面での支援が中心のよう.これらの文言を見る限りでは,従来も行われていたような事業とも想定される.恐らくはそれらを複合化することで,より実効性を高めることが課題と捉えているのだろう.京都市も既存のコミュニティ施策が行われているはず.まずは,各種事業とその手法の検証が必要か.

*1:日本都市センター『近隣自治の仕組みと近隣政府』(2004年)51頁

近隣自治の仕組みと近隣政府―多様で主体的なコミュニティの形成をめざして

近隣自治の仕組みと近隣政府―多様で主体的なコミュニティの形成をめざして

*2:金井利之「自治体経営」特別区人事・厚生事務組合,特別区職員研修所編『特別区職員ハンドブック2004』(2004年)18頁

*3:金沢市HP「第4回集合住宅のコミュニティ組織形成検討懇話会」会議資料4「(仮称)集合住宅におけるコミュニティ組織形成に関する条例骨子(案)」,3頁