宮城県美里町と、町の行政改革について調査、審議する町長の諮問機関「行政改革推進委員会」(千葉浩三委員長)が対立している。
 発端はことし7月、委員会がこれまでの審議の内容を批判的な文書にまとめ、委員長名で町議会議員全員に郵送したこと。町は「委員会の役割を逸脱した行為だ」と批判している。委員会は町長が委員を委嘱し、町が指名した選任委員6人と公募で集まった4人の計10人からなる。町が行政改革を実施するための「集中改革プラン」の進ちょく状況のチェックなどを行っている。委員会は昨年度の行革の進ちょく状況を審議するため昨年11月からことし3月にかけて計4回の会議を開き、町が進める行革に対して「(進ちょく状況に対する)役場内の自己評価が甘い」「このままでは行政改革の成果は期待できない」などと意見を出した。その結果をA4判2枚にまとめて7月、全町議に郵送した。千葉委員長(69)は「情報の共有を図り、行革が一歩でも前進するようにとの思いから配布した。委員の総意で送った」と主張している。佐々木町長は「意見や要望は町長に直接話してもらいたい。委員会の行為は正常なものではなく、改善が見込めない場合は委員の選任見直しも検討する」と話している。

同記事では,美里町におかれた行政改革推進委員会が,いわゆる「集中改革プラン」の進行管理を行い,その結果に関する意見をまとめ,同委員会委員長名で全町議に郵送したことを紹介.
同町HPには,同委員会に関する記録が掲載されていないようであり審議状況も把握できず,同記事だけでは,よく分からない部分もある.例えば,町議に送付された当該文書の性格である.同文書の作成(印刷等)や郵送作業を委員会として同町内におかれる「事務局」が行い,郵送費用を町が負担したのであれば,大学1年生向けの政治学等でも必ず扱われるテーマである*1,官僚機構に対するPrincipal-Agent Problemが,同町の首長と諮問機関の間に生じたともいえる.このような,いわば「主君押込」よろしく,同記事にもあるようにAgentである諮問機関のdriftが起こしてしまうことには,Monitoring上の課題ともいえ,Principalである首長は,同委員会委員,そして「事務局」に対しても,人事権を用いることに妥当性があるともいえる.
一方で,同委員会委員が,あくまで個(々)人が各自で作成・印刷作業をし,郵送料を個人負担により送付した場合であったとすれば,どうなのだろう.この場合,同諮問機関に就任歴がある一住民(個人)による「陳情」の一種とも言えなくもないようにも思われる.また,既に「集中改革プラン」の進行管理結果を,諮問側である首長に提出していた場合であれば,その文書については,同町情報公開条例*2に基づき,「公文書」として公開されるものであり,「何人も公開」請求できる情報として位置づけられることになる.そのため,公開が前提となる情報内容を下に,表現振りに問題があったとしても,一個(々)人が作成した文書であれば,首長側が関与する領域ではないようにも考えられなくもない(勿論,同委員会委員の就任期間,更には退任後もまた,当該委員会に関連する如何なる事項に関しても守秘義務を求め,委員側も同意をしていたとすれば,これはまた別の議論か).
いずれにせよ,首長の下におかれる各種諮問機関(審議会等)もまた,「政治から距離置いて合議によって結論を出す場」「政治から距離を置いた調整の場」*3であるはず.諮問機関自らが政治の調整に乗り出すことには,その設置根拠の内容にもよるが,恐らくは,やや行き過ぎた職分ともいえそうか.

*1:John Coleman, Kenneth Goldstein, William G. Howell,Understanding American Politics and GovernmentLongman Pub Group,2008,pp. 512-514

Preliminary Edition: Understanding American Politics and Government

Preliminary Edition: Understanding American Politics and Government

*2:美里町HP「美里町情報公開条例」(平成18年01月01 条例第11号)

*3:森田朗『会議の政治学』(慈学社,2006年)8,9頁(国のみならず,自治体において諮問機関に携わる人々は,まずは同書を読んだうえで,諮問機関に関与すべきとも思う(「必読規制」))

会議の政治学 (慈学選書)

会議の政治学 (慈学選書)