大牟田市は、市総合計画前期(2006‐10年度)の第2期実施計画案に、国史跡で重要文化財の宮原坑跡などの近代化遺産を保存・活用する計画の策定や世界遺産国内暫定リストへの登録を目指す施策を盛り込んだ。しかし、厳しい財政事情は変わっておらず、計画の実現を危ぶむ声もある。
 宮原坑について、市は三井三池鉱閉山に伴う対策事業の一環として施設を買い取り、立て坑やぐらを塗装するなど整備した。だが、巻き上げ機室が補修できておらず、倒壊の危険性も指摘され、一般公開の妨げになっている。市は第1期計画に補修を明記し、費用約3800万円を見込んだが、深刻な財政難により実現しなかった。第2期計画では、宮原坑だけでなく三池港閘門(こうもん)や旧三池炭鉱専用鉄道など炭鉱関連の近代化遺産を一括して保存活用するための計画を策定する。計画上は08‐10年度の実施を目指すが、「本年度、来年度とも予算計上の予定はない」(市教委)という。企業や市民の寄付による近代化遺産保存活用基金(約2800万円)は「補修が目的で、計画作りには使いにくい」(文化・スポーツ課)。産炭地域活性化基金は、より優先度が高い事業に充当される見通しという。万田坑跡について、熊本県荒尾市は産炭地域活性化基金を活用するなどして取り付け道路を整備、本年度は観光案内施設を建設する。立て坑やぐらと巻き上げ機室も、文化庁などの補助を受けて来年末までに補修を終える予定。

同記事では,大牟田市において,同市総合計画前期の第2期実施計画に掲載されていた,いわゆる「近代化遺産」の保存・活用等の実現が,財政上厳しい見通しであることを紹介.同総合計画実施計画については,同市HP参照*1
同市における近代化遺産保存の取り組みとしては,同記事でも紹介されたように,2005年7月には「大牟田市近代化遺産保存活用基金」を設け,旧三井港倶楽部への改修工事*2が進みつつある.また,先日では,読売新聞において,「市内に点在する三池炭鉱関連近代化遺産の一体的な保存,整備,活用を図ろうと」,「全体的な活用計画」を「計画は2010年度までに策定.宮原坑跡を含む約20の関連施設で歴史的な重要性などを調べ,補修や保存の優先順位について方針を定める予定」と報道されたばかり*3.同市の財政状況は,この数日間で大きく変化したとは思えないが,単なる報道媒体の着目姿勢の相異なのか,または,総合計画と個別計画間での調整上の齟齬なのか,はたまた,その他の要因があったのか.上記の読売新聞を拝読した時点では,着実な取り組みが進みつつあるのかとも思ってはいたものの,どういうことなのだろうか,よく分からない.
「生きた物語のある文化財」「現在の生きた社会のなかにある文化財*4とされる近代化遺産.その存続もまた当然現在の「生きた社会」からは逃れることはできない.

*1:大牟田市HP『大牟田市総合計画2006〜2015前期基本計画 第1期実施計画』「第5編 教育文化の向上」46〜47頁

*2:大牟田市HP『広報おおむた』2007年11月1日・15日合併号,No.1015,「特集近代化遺産を後世に 〜 近代化遺産保存活用基金の活用 〜

*3:読売新聞HP(2008年9月2日付)「近代化遺産全体的な活用を計画へ・・・大牟田市

*4:増田彰久『近代化遺産を歩く』(中央公論新社,2001年)6頁(同書では,潮の満ち引きを利用し港内の水位を変える「ローテクな」(128頁)仕組みを持つ,三池港湾港施設が紹介(126〜128頁))

カラー版 近代化遺産を歩く (中公新書)

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