田辺市議会は旧町村部の市民にも議会を傍聴してもらおうと、行政局などで常任委員会を開催することを決めた。合併後初の試みで、2007年度一般会計など各種会計の決算を審査をする。町村部から「合併して議会が遠くなった」という声が出ていたためで、市議会事務局によると、議案審査の採決を伴う委員会を本庁以外で開くのは、全国的にあまり例がないという。10月8日から実施する。
 田辺市が2005年5月に合併して近畿で最も市域が広くなったことなどから、町村部の市民からは「議会が身近に感じられなくなった」などと不満の声もあった。このため、議会運営委員会で町村部での委員会開催を検討。「効率的でない」という声も出たが、議会に対する理解や関心を深めてもらうという認識でまとまり、25日に開いた正副委員長会議で実施の詳細を固めた。委員会は10月8日から21日のうちの8日間、行政局や隣接する施設で開催。各地区2日間かけ、四つの常任委員会が付託された決算の審査をする。鈴木太雄議長は「議会を知ってもらうためにインターネットでの中継という手法もあるが、経費がかかるし何よりも一方通行になる。実際に議員が出向き、市民の考え方を肌で感じることが重要。決算は1年間の行政活動の結果であり、行政の動きを全体的に見ることができるのでぜひ来ていただけたら」と傍聴を呼び掛けている。市議会は傍聴した市民へのアンケートも行い、この取り組みへの反応や要望を聞く予定。今後も継続していく考えという。各委員会の日程と開催場所は次の通り。産業環境委員会=8日午前10時から、9日午前10時から、大塔総合文化会館(大塔行政局隣)▽文教民生委員会=14日午前10時から、15日午前10時から、中辺路コミュニティセンター(中辺路行政局隣)▽建設消防委員会=16日午後1時半から、17日午前10時から、龍神行政局▽総務企画委員会=20日午前10時から、21日午前10時から、本宮行政局

同記事では,田辺市において,合併前の旧町村地域において,常任委員会を開催する予定であることを紹介.市町村合併は,「役所」ばかりではなく,議会もまた「遠くなる」と言われてみると,その通り,興味深い取り組み.自治体議会改革フォーラムによる調査研究結果では,常任委員会の公開は4割程度とされる*1.このように地域毎による開催によ常任委員会公開の姿勢は,「見えない(見えにくい)議会を見えるようにする」取り組みとしても評価される.
同市のような,地域毎で議会開催に関して,例えば,全国市議会議長会の調査研究成果のうち「特色ある議会施設・運営の事例」を拝見してみるものの,ケーブルテレビ放送やインターネット配信などの取り組みはあるが,同種の取り組みは見出すことはできない*2自治体の事務所に関しては,地方自治法第155条第1項に基づき支所・出張所を設けて,7月1日の本備忘録及び9月18日の本備忘録でも見たように,それぞれの機能の重点度によっては,「分庁方式」,「総合支所方式」等に分ける運用もある.同方式からの類推をすると,議会においても,例えば,「総合議場方式」や「分議場方式」などにも開催運用可能性を広がるのだろうか.興味深い.
同記事を読むと,議会という物理的空間の地方自治法制上の位置づけを考えさせられる.つまり,地方自治法第4条第1項(地方公共団体の事務所の設置又は変更)では「事務所の位置」を条例で定めることが規定されている.同項を敷衍すれば,「事務所の位置」を確定することに先立ち,物理的空間としての議会がまずは先に成立しており,後に「事務所」が置かれるという手順を取ることを要請するようにも読むことができる.いわば,自治体の区域という空間内に,物理的空間としての議会が占有され,その後に「事務所」が置かれるということになる.そのため厳密に考えてみると,同項にいう「事務所」概念には,物理的空間としての議会は包含しないとも考えられなくはない.これは,例えば,新たな自治体が設置される場合には,「従前の市役所或いは町村役場の一つを暫定的に新しい地方公共団体の役場として,新しい議会が成立した上で正式に事務所の位置を決定する条例を提案するのが適当」*3との解釈が示されていることからも,「事務所」概念への物理的空間としての議会が包含されないという考え方は必ずしも棄却されないように考えられる(そのため,「事務所」と「議会」が同一住所に設置されることは必ずしも要請されてはいないとも考えられる).
では,物理的空間としての議会は,どのように位置づけるのだろうか.地方自治法では「議会の位置」に関する手続等については,沈黙している.もちろん,実際上は,上記の「事務所の位置」と同一の位置に議場等が設置されることにもなり,「事務所」概念との現実的一致に至ることが一般的ではある.ただ,この場合には,同項のように,まずは議会自らが「成立」した後に「正式に事務所」を規定するため,「新しい議会が成立」した段階には,実際には,物理的空間としての「新しい議会が成立」したとは,制度上は言い難いとも考えられなくもない.いやむしろ,地方自治法にいう「議会」とは,単に物理的空間を指すものではなく,集合概念として議会を想定しているともいえそう.となれば,本会議も含めて,特定の物理的空間での開催に限らず,自治体の区域という空間の何れにおいても開催することも適当な判断とも考えられそう.考えてみるとややこしいが,議会は特定の議場(会議室)で開催するものという固定観念は,制度上は,必ずしも確たるものではないのだろか.