飯泉嘉門徳島県知事は二十五日の定例記者会見で、相次いだ職員不祥事を受けて設置する監察局のトップに関し、外部から非常勤特別職として迎える方針を明らかにした。年内に体制を整え、年明けの発足を目指す。監察局設置に必要な条例案を二十八日開会の県議会十一月定例会に提案する。
 知事は監察局について「議会での議論を通じ、検討を深めたい」と前置きした上で「県庁の中で起こったことでもあり、県庁の体質をきっちりとチェックをするという意味で、トップには第三者機関から、こうしたことへの知見のある人を迎えたい」と語った。六月に続き、十二月も期末手当(ボーナス)を全額返上することについては「六月は不祥事を食い止めるという決意表明だった。しかし、再発防止に取り組むさなか、無免許で公用車を使い、女性に被害を与える事件などが起こった。今回は決意表明も込めると同時に、最高責任者の知事として自らに処分を科した。何とか年内にけりをつけたいという思いを込めた」と話した。

同記事では,徳島県において設置を予定している監察局に関して,そのトップ(局長職なのだろうか)を非常勤特別職として,県庁外部から採用する方針であることを紹介.
10月20日の知事による定例記者会見でその意向が示され*1,11月18日には議会運営員会においてその設置方針が明示.そして,同記事のような機構設計案となる.11月18日付徳島新聞を拝見すると,同県の機構上*2の危機管理局のように,他の部局からは独立した局として置かれ,「庁内の職場,職員の日常業務を監察し,調査・勧告権限も持たせる」*3とあり,いわゆる「服務監察型」の機能を中心とした機構設置が想定されている模様.
内部監察制度・機構に関しては,各自治体内での制度的・機構的変遷を受けて種々様々な形態にある.一般的には「自治体の内部監察・監査制度は,人事管理,行政管理部門に埋没・吸収」され「影の薄い内部監察制度をいっそう目立たない」*4とされてきた(ただ,これら内部監察制度の観察・分析結果も,2000年以前のものであり,各自治体で行政評価制度が導入されたこと等により,同種の内部監察制度がどのような態勢にあるかは,要観察事項の一つ).一方で,東京都総務局行政監察室*5のように「企画,行政の事務管理部門から分離し,官房系の総務局の中に,総務部や人事部,財政部から独立する形で,これらの部と並列に位置づけられ」(207頁),「「服務監察型」,「総合考査型」の内部監査」(203頁)行う「きわめて珍しいケース」(同頁)もある.
同県の場合,同紙の表現を用いると「知事直属」とされ,他部局との「離隔距離」*6からすれば,東京都総務局行政監察室にも近い(より独立性を高めた)制度・機構となるのだろうか(なお,同用語,感覚的には分からなくもないが,個人的にはその制度上・機構上にはその意味合いがよく分からない用語の一つ.例えば,指揮命令系統において,首長から所属職員との間に中間層が置かれないということなのだろうか.しかし,同記事等を読むと,非常勤特別職とはいえ「トップ」が置かれるため,個人的には,より制度的・機構的な意味合いを理解するには少し時間が必要).ただ,その場合,首長部局内に置かれる内部制度・機構となると行政評価制度との機能分担(まさに,服務監察に特化する等)や,行政監査を行いうる監査委員制度等との機能分担も課題か.また,そもそも「独立」された監察局が,その活動資源ともいえる専門性を如何に調達するかを制度的に確保・保障するのかという課題もあるように思わなくもない.監察局が,いわば「真の内なる敵」となりうるには,「トップ」を非常勤特別職とするだけではなく(勿論,当該機能と非常勤であることへの疑問も無くもないが),実働部隊となるはずの同局内職員に関する庁内人事管理にも格段の配慮が必要になるようにも思われる.今後の機構設計は,要経過観察.

*1:徳島県HP(知事室過去の記者会見録)「平成20年10月20日 定例記者会見職員の不祥事について(質疑)

*2:徳島県HP「県庁組織

*3:徳島新聞(2008年11月18日付)「「監察局」年内発足 県職員不祥事再発防止策、知事直轄の組織に

*4:白智立『日本の行政監察・監査』(法政大学出版局,2001年)202頁

日本の行政監察・監査

日本の行政監察・監査

*5:東京都HP(東京都の組織)「総務局

*6:金井利之「会計検査院政策評価」『行政の評価と改革』(ぎょうせい,2002年)60頁

行政の評価と改革 (年報行政研究 (37))

行政の評価と改革 (年報行政研究 (37))