◇マップ作製、新商品開発…
 カレールーの消費量が全国1位の鳥取県を全国に誇れる“カレー王国”に育てるための意見交換会が12日、県庁であった。県職員や鳥取カレー倶楽部のメンバーら9人がカレーによる地域振興策について意見交換した。
 カレー研究の第一人者、カレー総合研究所(東京都新宿区)の井上岳久所長が「食」による街おこしの各地の事例を紹介。その後、参加者は、カレーマップの作製▽産官学の連携▽カレー味の新商品開発などのテーマでスパイスの効いた地域おこしに向けて意見を交わした。同倶楽部の池本百代会長は「今はまだ消費量が1位というところで止まっている。飲食店や家庭を調査して、『鳥取のカレー』という独自のスタイルを確立したい」と意気込んでいた。同倶楽部は来年秋、鳥取因幡の祭典の一環として、カレーで地域おこしをしている各地の代表を招いて「全国カレーサミット」を開く。【遠藤浩二

同記事では,鳥取県において,消費量全国一位のカレーの消費量をもとに,地域振興策を検討し始めたことを紹介.同県内にある鳥取市のHPを拝見すると,市報*1では,鳥取カレー倶楽部やカレーンジャーの活躍等が紹介.
家計調査の結果でも紹介されているように,全国の県庁所在地における2005年度から2007年度の平均消費量のうち「カレールウ」の総消費量については,2,091グラムで鳥取市が一位の結果(第二位は僅差で,富山市2,089グラム.また販売額では全国一位は新潟市の1,660円,同市は1,576円で第6位)*2にあることは,比較的よく知られた統計結果.同記事では,鳥取県が全国一位と報道されており,県内の他市町村もまた「カレールウ」の消費量が高いのかと,少し驚き.県内の市町村全てのデータを把握した上で,その要因を調べてみなければ.
「カレー」といういわば「大票田」で地域活性化の方策を探ることは,その支持者が多いことで活性化の機会となりやすいことも想定される一方で,例えば,既発の「内発型の名物として,広がりを見せ始めている」*3とも観察される,「よこすか海軍カレー」等があり,その競争も厳しい部分はありそうか.11月23日付の東京新聞の報道を拝見すると*4横浜市の「ハマカレー」,横須賀市の「海軍カレー」,郡上市の「奥美濃カレー」,土浦市の「ツェッペリンカレー」,と並び,鳥取市の「鳥取カレー」による「カレー五大都市サミット」が開催されたことが紹介.これらの「横の連携」*5により,競争激化よりも主要5市による「カレー」の機運を高め相乗効果を期待されているようである(ただ,同時に結果として寡占状態になりそうな気もしないではないが).
地域活性化が持続的発展するためには,「地域住民による事業への参加と支援が必要」ともされ,勿論,そのための仕掛けを作ることは「簡単なものではない」ものの,「コンサルタントや企業任せで住民不在の事業が成功する可能性は低い」ともある.また,その一方で「地域住民の着想や視点は,しばし独りよがりな,外部からの来客者のそれとマッチしないものになりがち」とも分析される*6.「地域住民の着想や視点」を超えたものとするためにも,同記事のように,同県内で活動されているカレー支援各団体との活動も県レベルで主導することも一つの方策なのかなあとは思いつつも,他都市の動向からすれば,まずは,市町村レベルでの活性化方策として実施することが適当かとも思わないでもない.市・県間の連携よる相乗効果も期待できるかと思われるが,この点については,要観察.

*1:鳥取市HP(広報・公告とっとり市報・支所だより・ 平成20年とっとり市報平成20年8月号)「シリーズ元気です鳥取カレー倶楽部

*2:総務省HP(統計局・政策統括官(統計基準担当)統計データ家計調査都道府県庁所在市別ランキング)「油脂・調味料」

*3:豊田奈穂「地域ブランドで人口争奪競争に挑む」『地域魅力を高める「地域ブランド」戦略』(東京法令,2008年)233頁

地域魅力を高める「地域ブランド」戦略―自治体を活性化した16の事例

地域魅力を高める「地域ブランド」戦略―自治体を活性化した16の事例

*4:東京新聞(2008年11月23日付け)「輝くまち カレーで実現 土浦など5都市「サミット」開催 取り組み報告など

*5:田口一博「自治体間の横の連携」森田朗・田口一博・金井利之編『分権改革の動態』(東京大学出版会,2008年)154頁

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)

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*6:森田朗発想の転換による地域活性化」『地方自治職員研修』第41巻No.5,2008年5月,15〜16頁

地方自治職員研修 2008年 05月号 [雑誌]

地方自治職員研修 2008年 05月号 [雑誌]