政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は16日に緊急の会合を開き、第2次勧告に盛り込んだ国の出先機関の職員約3万5000人の削減目標について、政府に具体的な対策を求める要求事項であることを再確認する。
 各省からの出向者らが集まる分権委の事務局が最終的に作成した勧告の文章では、数値目標部分が「政府に措置を求める対象」から除外されるような文章が挿入されていることがわかったためだ。分権委が第2次勧告を決定した8日の会合では事務局が中心となって作成した勧告原案に対し、丹羽委員長が、出先機関職員約3万5000人の削減(このうち地方移譲2万3100人)を勧告に盛り込むよう提案。各委員が了承した。その後、事務局が「突貫工事」で原案を修正し、丹羽氏が麻生首相に勧告を手渡した。最終的な勧告には数値目標を盛り込んだ「出先機関の改革の実現に向けて」(第2章の4)の最後の部分に、「政府に対して具体的な措置を求める事項は、5及び6のとおりである」との一文が挿入されていた。「5」と「6」は、出先機関の組織改革などに関するもので職員の削減目標には触れていない。このため政府内では、勧告後、「職員数の数値目標は、政府が来年3月末までに策定する統廃合計画に入れる対象ではない」とする見方も広がっている。ある分権委の委員は「事務局の官僚は姑息(こそく)な手段を使った」と批判している。

砂原庸介先生経由で知り,本日の記事差し替え.同記事では,地方分権改革推進委員会が12月8日に提出した『第2次勧告』の記載事項において,具体的な要求事項への該当範囲の解釈を巡り,12月16日に会合を開催する方針であることを紹介.『第2次勧告』*134〜35頁の,同記事で言う「突貫工事」部分における「具体的な修文案」の執筆を,「突貫工事」ではありながらも,委員長又は委員によって行われていないことには,少し驚き.
「役所にとっては,答申は権威ある文書であり,それを尊重し,それに従って事務を実施しなければならない」ため,「できないことが書かれていたり,将来困る事態が生じないように,答申案を作成する事務局は,予め関連部局から意見を聴取し,賛同を得ておく必要がある」*2との参与観察結果からもあるように,答申の実現可能性という観点からすれば,答申提出以前での受入側との調整は必要ともいえる.これは,ハーバード・サイモン先生による,権威に対する「受容圏」(zone of acceptance)*3の考え方からも補強される(本当か?),観察結果.何れにせよ,委員会としての権威はそれ自体であることはなく,その権威を受け入れられる側があってこその権威ともいえる.
ただ,一方で,余りに受容側に阿ると権威が権威ではなくなることも事実.さて,対応をどうするかということになるが,『第2次勧告』というプログラムの初期誤作動と割り切り,『第2次勧告2.0』(やや表現が古めかなあ)の如く,新バージョンとして更新し,読み間違えないように,その権威の受入側(首相)に示すことが,今風の権威を確たるものにする方法ではないかとも思わないでもない.

*1:地方分権改革推進委員会HP(委員会の勧告・意見等)『第2次勧告 〜「地方政府」の確立に向けた地方の役割と自主性の拡大〜』(平成20年12月8日)』 ,34〜35頁

*2:森田朗『会議の政治学』(慈学社,2007年)115〜116頁

会議の政治学 (慈学選書)

会議の政治学 (慈学選書)

*3:Herbert A. Simon,Administrative Behavior fourth edition,FreePress,1997,10

Administrative Behavior, 4th Edition

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