総務省は10日までに、2010年の次回国勢調査で回答率向上のために導入を検討しているインターネットを通じた回答方式について、全国一斉の実施は見送り、オートロックやワンルームのマンションが多い大都市を中心に導入する方針を固めた。
 国勢調査の回答は05年の前回調査まで、調査員が面会方式で調査票を回収。個人情報保護意識の高まりもあり、前回は回答率が95・6%と過去最低だった。総務省は回答率アップのため(1)配布された調査票を郵便で返送(2)ネット上の専用サイトで回答−なども選択できるようにする方針。ただネット回答方式は、他人への成り済ましを防ぐため、世帯ごとに事前のID発行が必要。このほかパソコン操作の説明リーフレットを新たに作成する経費なども考慮し、次回調査では効果が見込める地域に限定して導入を検討する。具体的な対象自治体などは今後詰める。

同記事では,2010年度の国勢調査において,大都市部ではネット回答を導入することを紹介.
1月8日付の本備忘録でも取りあげた調査統計における回収問題への政府側対応が確定したとのこと.個人的な行政観察上の課題としては,重要な報道.
同対応については,同日の備忘録でも触れたように,2008年11月に開催された第9回の「平成22年国勢調査の企画に関する検討会」においても,第2次調査によるオンライン回収状況について審議をしている*1.同調査の結果では,同日の備忘録でも触れた通り,回収率は「約2%(「多様な提出方法の並列周知型」では約3%)」や低い回収率.ただ,「調査困難地域で比較的高い(建物1棟でいくつかの調査区を構成しているオートロックマンション)」とあり「約5%」ともある.このような結果になった要因としては,回収率はそれほど高いものではない.その理由としては,「紙の調査票の方が回答しやすいから」(約41%),「インターネットの設備がないから」(約39%)とある.後者の情報インフラ問題は整備がなければ仕方がないとはいえ,前者の結果からは,既存調査方式の回答慣行からはなかなか逃れられない模様が分かる.これは,「オンライン回答を途中までやってみたがやめた理由」でも同様の傾向を窺うことができ,「紙の調査票の方が,わかりやすかったから」(約51%)ともある.このようにオンライン回収には未だ課題が多いことも事実のよう.そのためか,都府県・市区町の事後報告会では「オンライン回収率は低い.そのために各世帯に調査票IDを配布するのは効率が悪い」との意見や,「オンライン調査操作ガイドは簡潔にしたほうがよい.1枚程度にできないか」との意見が示されてもいる.
これらの調査結果を踏まえて,同回の同会では「対応方針」として,調査事務に関しては「調査票IDによる配り分けをやめ,オンライン調査用の調査対象者ID及び確認コードはオンライン調査操作ガイドに印刷し,調査員による簡易な配布方法に事務を改めること」とする.また,「電子調査票・オンライン調査操作ガイド」に関しては,「電子調査票について,PDF版の改善に加え,HTML版を作成する」ことや「調査書類の効率化並びに読みやすさ及びわかりやすさの観点から,オンライン調査操作ガイド(紙媒体)を可能な限り簡略化するとともに,操作説明の詳細な内容は,実際の操作画面で参照できるようにする」とあり,利用時の障壁除去が課題とされている.これらの手続的改善を受けて,同記事にもある「オンライン回収の実施地域」に関しては,「オンライン回収の割合が極めて低いと想定される地域もあり,特にそのような地域では、オンライン回収の導入により利便性が向上すると考えられる世帯は極めてわずかであるため,増加する調査員の事務負担やオンライン調査操作ガイド等の調査書類の作成・配布などの事務コストとの比較考量を慎重かつ十分に行う必要がある」とあり,平成22年国勢調査におけるオンライン回収では「将来の本格導入に向けての試行的な運用と位置付け」,「調査が困難といわれている若年単身者世帯や共同住宅などが多く含まれる大都市を中心に,過去の世帯対象の統計調査においてオンライン回収を実施した市区町村など,総務省統計局が指定する市区町村における実施とする方向で検討を進める」とされていた.
同回の同会でも指摘されているよう,オンライン回収自体も回収率が低いことは確か.同資料にもあるように「今後の広報やマスコミ報道の状況如何」でもあり,同回収方式の有効性については,要経過観察.