熊本市は九日、職員の法令やモラル順守の徹底を目的に、飲酒運転や口利き(行政への不当介入)など問題事例をまとめた「職員行動規範」案を明らかにした。職員の相次ぐ不祥事を受け設置した、外部有識者でつくる市職員倫理審議会に同日報告した。今月中に完成させ、全職員六千二百人に配布する。
 同市の二〇〇七年度の懲戒処分は、下水道工事に絡む贈収賄事件など〇三年度に公表を始めて以降、最多の十二件三十二人。このため、〇八年四月に職員倫理条例、七月には利害関係者との交遊における禁止行為を明記した職員倫理規則を施行。この規則に「分かりやすさ、見やすさを重視した」(市人事課)行動規範の策定を盛り込んでいた。規範案はA四判七十四ページ。「飲酒運転」「口利き」「手当の不正受給」「不適正な事務処理」「職務外での信用失墜行為」などの問題事例計十六項目を説明。「嘱託職員の採用で職員OBの意見を参考にした」「車の通勤途中に子どもを学校に送り、遠回りした距離の手当を受給した」「使用料徴収を担当者に任せっきりにしていたら着服が発覚した」などと具体的に表現し、分かりやすくした。地方公務員法、市懲戒処分指針など倫理、服務に関する関係法令もまとめた。市人事課は「職員研修で活用し、再発防止に努めたい」としている。(渡辺直樹

同記事では,熊本市において「職員行動規範」を策定し,全職員への配付予定であることを紹介.同市における同審議会及び条例については,同市HPを参照*1
同記事でも報道されているように,「職員行動規範」の策定に関しては,職員倫理規則第14条の「市長は,この規則に定めるもののほか,職員倫理の保持を図るため,法令遵守その他の職務及び職務外における職員の公務員としての行動のあり方を定めた職員行動規範を策定するものとする」*2との規定を受けて策定されるもの.同条例,同規則,同規範と職員倫理の保持のため職員行動に関する規則が輻輳的になるのかとも思われるが,同記事にもあるように「分かりやすさ」「見やすさ」の効果を有するものとなるのだろう.なるほど.
ただ,2009年1月5日付の岩手日報において,岩手県でも「県職員憲章」を策定するとの報道*3を拝読した折にも,「その実効性は如何ほどか」という点が想起したことも事実.実行性確保のためにも罰則又は誘因設計が課題.ただその一方で,行動経済学では「社会的な報酬や名声の奨励」(121頁)を生む「社会規範」が,「市場規範」よりも,「安あがりなだけでなく,より効果的な場合が多い」*4との観察結果もある模様.果たして,同種の条例・規則・規範が整備されている自治体職員間においても,同観察結果は共有される結論となるか,コンプライアンス研究との関係からも,興味深い観察テーマか.

*1:熊本市HP(熊本市の審議会等一覧.同HP(財政・行政改革・情報公開・監査)「 熊本市職員倫理条例及び職員倫理規則のあらまし

*2:熊本市HP(報告書等の審議会への報告及び閲覧等)「熊本市職員倫理規則

*3:岩手日報(2009年1月5日付)「「県民本位」など5カ条 県職員憲章を策定

*4:ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』(早川書房,2008年)127頁

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

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