県議会の萩野虔一議長は二日の定例記者会見で、県議会の付属機関「議会活動諮問会議(仮称)」の設置に対し、あらためて強い意欲を示した。
 萩野議長は、合議制の議会が付属機関を設置するのは、地方自治法になじまないと当初指摘した総務省の解釈について、「私たちにも地方自治法の解釈権があり、違反することではないと思っている」と主張した。さらに「実際問題として付属機関をつくって、法解釈に決着をつけたいという思いもある。私たちが出さない限り、帰着点はないのではないかというぐらいのことを思っている」と強い姿勢を示した。県議会が検討している付属機関は、地方自治法で県や市町など執行機関に設置が認められている諮問機関の議会版。同法に議会の付属機関の設置は定めがなく、県議会基本条例に基づき、設置することになる。

同記事では,三重県議会において,議会への附属機関の設置を検討していることを紹介.
同附属機関については,同県議会基本条例*1第12条(議会は,議会活動に関し,審査,諮問又は調査のため必要があると認めるときは,別に条例で定めるところにより,附属機関を設置することができる)に基づく設置が検討されたと考えられる.同附属機関の役割等に関しては,同日の読売新聞において報道*2.同記事によると,「「議会活動諮問会議(仮称)」とし,これまでの改革を外部の有識者(3〜5人)が評価し,その意見を「より質の高い議会改革」に反映させるのが目的」とある.同記事からすれば,同県議会HPにも掲載されている「三重県における議会改革」の各事項に関する進捗管理が主たる機能となる模様.
実際に附属機関が機能するか否かは,同機関に付与される権限次第(例えば,是正勧告を認めるか否か,勧告内容の遵守義務を置くか否か等)かとも思われる.もしも,一定程度の権限を同機関に認めるとすれば,議会基本条例が「憲法」的であるとすることからも,同条例に基づき同機関が,同県議会に対する「制度的拒否権プレイヤー(institutional veto player)」*3となることを想定されているのだろうか.興味深い.
一方で,読売新聞の報道にもあるように,総務省の解釈からは同機関の設置については慎重であることを要請されている模様,一方で,第29次地方制度調査会の総会レベルにおいて,三重県選出の参議院議員である芝委員からは,「今日は議会の制度の充実でありますからお話し申し上げますと,これまでいろんな事案が関わってきますと,地方自治体の中には附属機関の設置,例えば医療に関する専門,経済に関する専門,看護に関する専門のいろんな審議会や諮問機関の設置ができますけれども,議会には附属機関の設置が自由にできません.是非,時代に合わせて,議会も行政のいろんな法案とか条例をチェックするためにも,専門知識が必要になってまいります」*4と,議会における附属機関の設置が必要であるとの見解も示されてはいる.
ただ,議会における附属機関の設置の目的が,同委員の見解のように,専門知見が必要であるという点に限定するのであれば,現行の地方自治法第100条の2に基づき,「必要な専門的事項に係る調査」の実施を「学識経験を有する者等」に委任することで,その目的を実現することができるようにも考えられる.同県議会では,2008年10月21日付の本備忘録でも取りあげたように,同県議会に「財政問題調査会」を設置した実績もある.そのため,同県議会の「議会改革」の進捗度の把握等の機能を期待するのであれば,個別に複数の「学識経験を有する者等」に同業務を委任することが,より客観的な評価が期待できるのではないとも考えられるのではないだろうか.
また,合議体による評価機関として議会に附属機関を設置した場合,その運営(つまり,「会議を支え,ときには審議を誘導する事務局の役割と行動」に関する「議会の行政学*5)は,議会事務局が担うことになるのかとも考えられるが,更にもう一つの合議体「に関する事務に従事」(地方自治法第138条第7項)することが可能なのだろうか.更には,議会という多様な価値と意見が集散する主体である主人(principal)の下に僕(agent)としての外部の附属機関を置くことは,僕である同機関が誠実であろうとすればするほど,議会内の何れの価値・意見からも一定程度の等距離を確保された見解,つまりは,現実的には「両論併記」*6(又は,個論併記)との答申しか示せないのではないか,とも考えられる.実際はどうなのだろうか.実際に設置されることとなれば,同機関の対応を是非とも観察してみたい.

*1:三重県議会HP(県議会の活動)「議会基本条例

*2:読売新聞(2009年2月3日付)「県議会改革検証へ「付属機関設置を 議長が意向、総務省は否定的

*3:Tsebelis,George.2002.Veto Players,PrincetonUP,19.

Veto Players: How Political Institutions Work

Veto Players: How Political Institutions Work

*4:内閣府HP(第29次地方制度調査会第3回総会:開催平成20年12月5日)「議事録

*5:森田朗『会議の政治学』(慈学社,2007年)4頁

会議の政治学 (慈学選書)

会議の政治学 (慈学選書)

*6:武智秀之『政府の理性、自治の精神』(中央大学出版部,2008年)143頁

政府の理性、自治の精神

政府の理性、自治の精神