徳島県の木村正裕副知事は五日、近く辞任する意向を固めた。県職員OBらと出向いた競馬観戦への批判に対する道義的責任をとる考えとみられる。早ければ来週中にも辞表を出す可能性が濃厚で、飯泉嘉門知事も本人の意思を尊重すると思われる。
 競馬観戦をめぐり、県監察局は五日、県公務員倫理条例には違反しないとの結論を出した。しかし昨年、職員不祥事が相次ぎ、県が信頼回復に取り組む中での副知事の行動としては反省すべき点があるとの意見も付けられた。飯泉知事は一月二十六日、木村副知事が務めていた県コンプライアンス統括本部の本部長職を解任した。その際、「倫理条例の目的は職務執行の公正さに対する県民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、公務に対する信頼を確保すること。これに当てはめると、あまりに思慮が足りなかったといわざるを得ない」と指摘していた。
 道義上の責任を追及する意見は県民の間にも少なくなかった。木村副知事はこうした状況を踏まえ、副知事職にとどまれば、今後の県政運営に悪影響を及ぼしかねないとの懸念を考慮したとみられる。木村副知事は監察結果を受けた五日の記者会見で「競馬観戦の当日(昨年十二月二十日)は、政府予算の財務省原案内示の日でもあった。副知事の職責は重く、全く思慮が足りなかったと反省している。県民に深くおわびしたい」と陳謝した。また一月二十八日、小松島市の自宅に「いすにすがりつくならば天罰が下る」などと記された匿名文書が封書で届いたとし、脅迫事件として県警に被害届を出したことも明らかにした。
◎倫理条例に抵触せず 監察統括監、知事に報告
 徳島県の木村正裕副知事が民間の企業・団体に勤める県職員OB三人らと競馬観戦をしていた問題で、島田清県監察統括監(弁護士)は五日、通報を受けて進めていた監察結果を飯泉嘉門知事に報告した。OBらの観戦行為は企業・団体の利益のためではなく利害関係者には当たらず、県公務員倫理条例に抵触しないと結論付けた。一方、職員不祥事を受けて県が信頼回復に取り組む中での副知事の行為としては反省すべきだとした。木村副知事は昨年十二月二十日、同三月に県を退職して民間に再就職した三人、県の現役職員四人の計八人で兵庫県阪神競馬場に行った。この日は二〇〇九年度政府予算の財務省原案内示の日でもあった。OBが勤める企業・団体と県との間には補助金・契約面で利害関係があり、倫理条例違反との指摘があった。
 副知事を含む八人らへの聞き取り調査の結果、島田氏は▽五年ほど前から競馬観戦の趣味を持つ者同士が年に一、二回出掛けており今回が特別ではない▽乗り合わせた車の燃料代、高速道路料金は分担している−ことなどが認定できたとした。その上でOBが勤める企業・団体は利害関係にあるが、OB個人としては「休日の個人的な楽しみとしての競馬観戦であり、企業などの利益のための行為ではない」とし、利害関係者に当たらないと判断した。報告書には「県民の目線に立てば、不信を感じての通報があったことを真摯(しんし)に受け止めるべきだ」との意見も付け加えられた。島田氏は報告の際、飯泉知事に対し「倫理の確立が叫ばれ、監察局を設けた背景を考えればもう少し気を付けるべきだ。今回の事実は監察をして分かったことで、監察前の時点では県民が誤解する可能性はあった。誤解が生じる行為は自制を」と注文を付けた。
飯泉知事は監察結果について「県民から疑惑、不信を招くような行為の防止を図る倫理条例の目的を重く受け止め、徹底を図りたい」と語った。自らの責任については「当然、副知事の任命責任はある。重く受け止めたい」と話した。

本記事では,徳島県に設置された監察局において,通報を受けて進めた監察結果を同県知事に報告したことを紹介.11月26日付の本備忘録12月4日付の本備忘録でも取りあげた設置後の執行事例.
同記事の内容ととも,2009年2月6日付の毎日新聞の報道を拝読すると,同局に対する「公益通報の受け付け状況(5日現在)」は,「今回の競馬問題に関する通報を含め」て,「これまでに35件を受け付け」ている,という.そして,「うち11件を受理」し,「出張旅費の受け取りに疑惑のあるものなど4件の調査を継続中」,「残る7件は「調査の結果,是正の必要がないもの」と判断」*1されたとある.35件の受付中11件の受理とあるが,受付数が公開されている以上,いわゆる「前さばき」*2ではないとは思われるものの,どのような選択基準があるのだろうか.興味深い.
同局に関しては,2008年12月27日付の徳島新聞の報道にあるように*3,2008年12月26日に設置.未だ設置後1ヶ月余であるためか,現在のところ,同県HPにある「例規集」内での「徳島県行政組織規則」の改訂版は掲載されてはいない模様.同記事にもある「報告」以外の権限(例えば,是正勧告等)は付与されているのだろうか.同局の所掌において,報告だけであるのか,是正を含めた勧告措置を含めているかにより,同局のプレゼンスが異なるとも考えられるが,最終的に確定された詳細な所掌内容を把握できず,残念.なお,同県HPでは,同局のページが掲載されており,主要業務の概括的な把握は可能*4.上記2つの備忘録でも取りあげた職には,検事経験者の弁護士の方が,特別職非常勤職員として就任され,「監察統括監は非常勤特別職で週一回のペースで登庁し,問題事案が発生すれば,随時,相談に応じてもらう」*5とのこと.特別職非常勤職員としては,地方公務員法第3条第3項第3号の企図通りの運用ともいえ,制度と運用の「乖離」*6が埋められた取り組みともいえそう.同記事等を拝読する限りでは,職名に「監」がついてはいるものの,決して「閑職」ではない模様.ただ,同局から報告結果と,同報告を踏まえての対応との間には乖離が生じたことも事実.ただ,報告と対応との間での乖離があったとしても,同局による「報告」対象となったこと自体で,既に自制効果を生む仕組みとなっているとも考えられそうか.今後の同局の実施状況は,要経過観察.