各務原市と愛知・犬山市
 木曽川の景観保全のために各務原市と愛知県犬山市が設立した「木曽川景観協議会」の第6回会合が26日、各務原市役所で開かれ、景観法15条に基づいて協議会規約を変更し、同日付で任意団体から法定協議会に移行した。県をまたいでの法定協議会は全国で初めて。今後は、川の護岸や橋の修繕などの際に国などと直接協議ができるようになる。
 両市は、木曽川を挟んで対岸に位置し、国宝・犬山城犬山市)や日本初の女優といわれる川上貞奴の別荘「晩松園」(各務原市)がある。協議会は05年8月、互いの市から見える木曽川中流域の河川沿いの景観を保全しようと全国で2番目に設立した。この日の協議会で、協議会規約の目的を「景観法15条に基づき、連携して景観の保持、創造を図る」などと変更。協議会会長の森真・各務原市長は「木曽川は伝統と歴史のある大河。一層の景観づくりを進めたい」と述べ、犬山市の田中志典市長は「両市が歴史と景観を守ることで次世代に景観が残せる」と話した。【宮田正和】

同記事では,犬山市各務原市から構成される「木曽川景観協議会」が,景観法第15条に基づく「各景観行政団体間の規制誘導策の連携・調整の場」*1である景観協議会へと移行することを紹介.都道府県の区域を越えた景観行政としては,2008年10月6日付の本備忘録において若干言及した,地方自治法第252条の2に基づく「関門景観協議会」*2等があるなかで,都道府県の区域を跨ぐ景観協議会としては,同協議会が初の設置となる模様.
両市に景観計画を拝読すると,例えば,各務原市の景観計画では,「犬山市と本市は木曽川を挟んで,互いに景観,風景,景色を見合う位置関係にあ」るとして,「この木曽川中流域は,日本ラインの渓谷,国宝犬山城,犬山温泉,旧川上貞奴別荘,鵜沼城址,伊木山など日本でも有数の景勝地と観光地であり,その良好な景観の保全,形成には両市が一体となり連携を計りながら施策を展開することが必要不可欠」*3との経緯が示されており,更に,犬山市の景観計画を拝読すれば,「近年名勝木曽川の範囲を含めた区域での宅地開発や,国宝犬山城の対岸での高層マンション建設などが進み,河川を中心とした自然景観との調和という観点から見ると,今後さらに良好な景観が損なわれることが懸念」との問題意識(現況の景観対策に対する懸念)が示されている.そして,「そうした状況の中,平成17年8月に,共に景観行政団体である犬山市各務原市は,木曽川中流域の河川と河川沿いの市街地について良好な景観の保全と創造を図るため,“県”という枠を越えて連携し,木曽川景観基本計画の策定と当該計画に係る事業などを行うことを目的に「木曽川景観協議会」を設立」*4された,と同協議会設置の経緯がしめされており,そして,各務原市の景観計画では「両市連携で当該区域を木曽川文化圏の良好な景観の形成と観光振興に向けて,平成17年8月に設立した木曽川景観協議会を,景観法第15条に基づく法定の景観協議会の要件を満たす段階に至った際には速やかに移行する」(58頁)とのシナリオも示されていた.
2009年5月1日現在では,近江八幡市大阪市真鶴町大野市大分市鶴岡市飯田市と7協議会*5があるものの,景観法施行後の同協議会の広がりはやや抑制気味.ただ,「景観行政団体としての都道府県」のもとで「非景観行政団体としての市区町村」,「未景観行政団体としての市区町村」*6であった各市町村が,「景観行政団体としての市区町村」へと移行した場合,同法が想定する「一地域一団体主義」の原則からも,「景観」をめぐる「排除可能性」が高まることとなり,共有される景観において対策を図る場合,景観行政団体間での媒介役が不可欠になるともいえる.そのため,同協議会の仕組みの汎用可能性は高いように考えられる.もちろん,同協議会を現在設定した場合であっても,将来的に,何れかの景観行政団体が逸脱性行為へと至る蓋然性も無いことはないだろうが,今後,同協議会の設置が広がりは要観察.