【宇都宮】毎年、職員から事務改善などのアイデアを募集している市は本年度から、実際に取り組んだ優秀な事務改善の提案(実績提案)に対し、1件につき5万円を上限に調査研究などの経費を助成することにした。提案者の所属に対する助成で、さらなる改善活動の奨励が狙い。26日、佐藤栄一市長が定例記者会見で発表した。
 提案は職場で過去1年以内に実施した事務改善の実績提案と、事務改善につながる自由提案の2種類。「気づくことから始めよう!毎日改善活動」がスローガンで、7月を推進月間に位置付ける。
 職員提案制度はスタートして5年。一人一人の発想を生かして職場の改革・改善を続ける狙いがあり、これまでに計2200件の応募があった。その中から市民に分かりやすい窓口業務の表示や、職員の超過勤務防止と市庁舎の二酸化炭素削減を狙ったスイッチオフデーなどが実現した。
 しかし「最近は似たような提案が多く、アイデアが枯渇気味」(行政改革課)という。そこで新たに、実績提案に対し助成を行い、職場や職員のやる気を促すことにした。実績提案、自由提案とも9月に評価、11月に受賞者を発表する。

同記事では,宇都宮市における職員提案制度について紹介.同制度については,同市HPを参照*1
同市では,「職場の中で実際に実施したもの,または実施中のもの」のうち,「市民サービスの向上」「事務効率の向上(時間・手続き)」「経費・コストの削減」「職場の活性化」について「改善効果が見られた事例について報告する」「実績提案」,「幅広い視点や斬新なアイディア等により施策や事務事業,事務改善などについて自由な提案を募集」される「自由提案」,「設定された「テーマ」に対して,創意あふれる提案を募集」する「課題提案」の3つの形態で実施.その実績は,同記事では同制度実施後「2200件の応募」とあり,より詳細に確認してみると,2003年は75件,2004年89件,2005年157件,2006年569件,2007年870件,2008年522件,確かに,前年度は減少したものの,量的には増分傾向にあったといえる.
同種の提案を引き出すための誘因としては,Carrot and Stickの2つに大きく分けることができる.そのうち,Carrotである報償に関しては,例えば,同年9月13日付の本備忘録で取りあげた山梨県における職員提案制度を通じた賞与増額の取組のように,「個人」単位に組み込む方式もあれば,または,同記事でも紹介された同市のように,「1件につき5万円を上限に調査研究などの経費を助成」し,「提案者の所属に対する助成」するという「組織」単位に組み入れる方式もある.
確かに,自治体の執務形態を踏まえた「評価方式」としては,「グループ評価」*2が適当ともされ,その報償への評価単位もまた,「組織」に帰着することが妥当.ただ,例え,「実績提案」が対象とはいえ,同市の仕組みの場合,職員「個人」の「実績」に基づく提案が,「組織」への報償へと帰着してしまう蓋然性も想定されそう(いわば,「「個人」提案-「組織」報酬」).そのため,やや混線気味の提案と報酬関係を整序し,まずは,「「組織」提案-「組織」報酬」経路を確立するとともに,一方で,純然たる「「個人」提案-「個人」報酬」という2つの経路の整備は考えられないのだろうか.難しい.

*1:宇都宮市HP(うつのみやのまちづくり行政改革職員提案制度)「宇都宮市の職員提案制度

*2:大杉覚「人材育成を見据えた人事評価制度の活用」『月刊自治フォーラム』No.595,2009年4月号,13〜14頁